3月14日より公開中のドキュメンタリー『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』は、愛犬の鳴き声が原因でカリフォルニアの都会のアパートから追い出された夫婦が、田舎に東京ドーム17個分もの広大な農場をつくるまでを追ったドキュメンタリーだ。

本作を制作した夫のジョン・チェスターさんは、農家になる前は「アニマルプラネット」や野生生物番組のカメラマンで、妻のモリ―さんは料理研究家。驚くべきことに、二人とも農業についてほとんど知らなかったという。

荒れ果てた土地を購入してから8年。彼らの土地は多様な生態系を有する“奇跡の持続可能な農場”に生まれ変わり、いま、世界中から注目を集めている。スクリーンに映し出される壮大な自然美だけでも必見の価値があるが、それ以上に、自然と人間は共生可能だということを証明してくれる作品だ。

農業初心者でありながら、なぜ広大な農地を経営しようと思ったのか。そして、現在私たちが直面する自然破壊への解決策にもなり得る、多様な生態系が存在する持続可能な農業とは、一体どういうものなのか。チェスター監督に話を聞いた。

ジョン・チェスター監督〔PHOTO〕『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』より

愛犬の鳴き声で6軒のアパートから追い出された

――殺処分寸前で保護した愛犬のトッドの鳴き声がうるさくて、サンタモニカやLAのアパートを追い出されたそうですね。

ジョン・チェスター監督(以下、チェスター監督):6軒のアパートから追い出されました。トッドに関しては、近所の人達は全然悪くないんですよ。むしろよい人達ばかりでした。何しろトッドときたら、12時間ぐらいぶっ通して吠えるんだから、ご近所さんが大家に苦情を入れるのは当たり前ですよね(笑)。大家としては、私たちを追い出さないわけにはいかなかったんです。

こちらがトッド〔PHOTO〕ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』より

――でも引っ越しをする前に、色々な方法を試したそうですね。

チェスター監督:テレビに出るような有名なドッグ・トレーナーも2人ぐらい雇いましたが、全く効果はなかったですね(笑)。ほかにも、吠えたら犬の嫌がる超音波の音が出るキットも使いましたが、トッドが怒ってバッテリーをメチャクチャにしてしまい……。でも、あの超音波はトッドにとっては拷問のようなものだったから、今となってはかなり後悔しているんです。

そうそう、それから、ちょっとした外出のときもトッドを一緒に連れて行けるように、トッドにベストを着せて介助犬のフリをさせたことも(笑)。しかしさすがに道徳的にどうかな、と思ったし、どちらにせよ、私もモリーも仕事で何週間も家を空けることもあり、長続きしませんでしたね。