プロ野球選手を丸裸に…仕事人「スコアラー」の知られざる伝説

わずかな癖も見逃すな!
週刊現代 プロフィール

'18年に巨人から離れた三井氏が、先ごろ上梓したのが『ザ・スコアラー』(角川新書)である。スコアラーとは相手の情報を収集して弱点を分析し、選手や監督に伝えるのが仕事だ。「裏方」だが欠かせない存在である。

私が特に注意していたのが、選手への「伝え方」です。スコアラーの発言は毒にも薬にもなります。アドバイスの仕方ひとつで、打者ならヒットが出るかどうか、投手なら目の前の打者を抑えられるか否かを左右してしまう。

ひいては年俸の査定にも響くわけです。選手の生活を預かっているのも同然だから、言葉には責任を持たないといけない。

そこで私はどんな質問に対しても、短い言葉で、強く自信をもって返すことを心がけました。選手を迷わせないためです。WBCのときのイチローへのアドバイスも、この考えに基づいています。

江川から教わったこと

とはいえ、最初はすべてが手探りでした。

私は'78年、島根の出雲西高校から外野手としてドラフト外で巨人に入団しました。同期には江川(卓)さんがいます。しかし'84年、23歳のときに腎臓疾患が見つかり、引退を余儀なくされました。

その後、巨人のV9を支えた大先輩のスコアラー・小松俊広さんから「三井、俺の次をやらないか?」と声をかけていただいた。そうやって、私のスコアラー人生は'86年から始まりました。

スコアラーは、チームに帯同し、集まったデータをもとにその日の作戦を組み立てていく「チーム付き」と、次に対戦する相手の直前の3連戦を視察し、情報を収集・分析する「先乗り」に大別できます。

私の担当は最初、チーム付きでした。バックネット裏で試合を見て分析し、対戦相手の攻略法を一生懸命作っていましたが、選手はだれも話を聞いてくれなかった。