比較によってしか幸せを認識できない不幸

「比較」によってでないと幸せを認識できない感覚。第4話「深山町の双六堂」は、優越感を味わうために、近所の家庭事情を細かく考課して双六盤に仕立てる主婦の政子の物語だ。しかしどこからかそれが表に漏れてしまい、自分の家の評価を確認したいと女たちが訪ねてくるようになる。

木内 今回の作品では、「他者との比較」もテーマにしたいと考えました。女性の場合、他人と自分を比較してしまい、それで思い悩む人もいます。男性は、どの会社に勤めているとか、年収など、社会的ステイタスで比較する傾向があり、これは数値化できるのでわかりやすいんですよね。でも女性は既婚未婚や子どもの有無、結婚していても働いているか、働いていないか、比べる要素がたくさんあります。

中瀬 わかります。よく話題にでるテーマです。男性は、イケメンで、長身で、一流大学を出て年収5000万円といった人がいたら、とても適わないと、最初から張り合おうとしません。でも女性は、あの人は胸がないとか、声が変とか、どこか自分が勝っているところを探し出します。なかなか完全敗北は認めません。

木内 幸せのかたちが人それぞれなのに、自分と違う境遇の人が幸せだと自分が否定されている気持ちになってしまう──、複雑な構造ですよね。そもそも張り合っているから不安なんだと思います。「私はこうだ」と自分の生き方に確信ができるところにいきつくのが、いちばんの幸せなのかもしれません。
中瀬さんは、白川さんに出会った時、この人と一緒になるという予感はありましたか。

撮影/杉山和行

中瀬 ありました。ただ、29歳の時に離婚を体験していなかったら、19歳年上のムショ帰りのギャンブル依存症は拾わなかったと思います(笑)。離婚、そして、白川との出会いを経験し、周囲の目が気にならなくなりました。どんなにハンサムでも自分が好きな顔じゃなければ意味がない、この人は子なき爺似だけど、子なき爺界ではイケメンじゃないか、と。ただ、ある有名な霊能者の方には、「彼にお金を渡すのは砂漠に水をまいているようなもの。でもあなたはそれで満足するので反対はしません」と言われました。大当たりでしたね。

木内 ご自身のそういう側面って、気づいてました? 

中瀬 最初の結婚相手は、すごく優しい人で、穏やかな結婚生活に幸せを感じる人でした。でも私にはそれを物足りないなどと罰当たりなことを考えて離婚してしまったんです。その後、出会った白川との刺激的な生活の中で、人にうらやましがられる幸せでなくてもこのほうが私のほうに合っていると実感しました。時にはかなり不必要な刺激もありましたけど(笑)。

白川がお金を使いまくるということは、どの占いでも指摘されました。よく当たると評判の西洋占星術の方には、白川のすべての星が私の星の上に乗っかっていて、あなたはこの人の面倒を一生みることになる星だと言われました。

木内 腑に落ちると言ったら変ですけど、そういわれると納得いきますね。