直木賞作家の木内昇さんが「不思議な話、そして、女性が模索する過程を書きたい」と、大正時代を舞台にさまざまな悩みを抱える女性たちが占いや霊的なことにめりこんでいく様を綴った、連作短編小説『』(うら・新潮社)。本書には読心術師、透視術師、嫌な気持ちを食べてくれる喰い師など、さまざまな占い師が登場する。

執筆にあたり、それまで「占いは雑誌の星座占いを読む程度」だった作者の木内昇さんは、複数の占い師を訪ねたという。その際、新潮社の出版部長で、情報番組のコメンテーターを務めており、「無類の占い好き」として知られる中瀬ゆかりさんにも、占い師を紹介してもらったそうだ。

短い期間に複数の占い師を訪ねた木内さん、中学生の頃から数えると、「それこそ何百回」もの占い経験を持つ、占いオタクの中瀬さんに占い師の持つ不思議な力について語ってもらった。占いを信じなかったという木内さん、また当たると聞けば海外の占い師も訪ねる中瀬さん、二人を虜にしたのは──?

小説を書こうとするまでは占いに行ったことのなかった木内昇さん(写真左)と、占いオタクだという中瀬ゆかりさん(同右)が「すごい」と思ったのは…… 撮影/杉山和行

霊感タロットに「うさんくさい」と
思って行ったけど

中瀬 執筆に際し、さまざまな占い師を訪ねたと聞いています。とくに印象に残った占いはありましたか。

木内 霊感タロットですね。正直、うさんくさいなと思いながら行ったのですが、統計学では処理できない事柄を言い当てられて驚きました。手相は当たっている部分と当たっていない部分が半々という印象でしたが、タロットは具体的でした。
中瀬さんにも紹介してもらった、霊能者のA先生もすごかったです。名前を書いた紙に手をかざすといろいろ視えるようで。

中瀬 A先生は、困ったことがあると必ず訪ねている先生で、かれこれ20年以上のお付き合いになります。

木内 今お付き合いされている彼との出会いも、A先生に予言されたんですよね。

中瀬 そうなんですよ! 2016年の秋に視てもらった時、「12月に運命の相手が現れるわよ」と言われたんです。12月に入ってからは、絶対に見逃さないように、電車に乗っても喫茶店に行っても、目から煙が出るくらい集中していたのですが、それらしき男性は現れません。「あと数日で本当に現れるのだろうか」と、辛抱できずに12月26日にまたA先生のところに行ったのですが、まだ現れていないとおっしゃる。大晦日に姉と紅白歌合戦を見ながら「さすがに今年はもうないな」と思ったのですが、年が明けて、1月8日に、現在、お付き合いしている彼と出会いました。占いですから、その程度の誤差は織り込み済です(笑)。信じることができなければ見逃していたかもしれません。迷いなく新しい恋愛を始めることができたのは、A先生の予言で心の準備ができていたからだと思います。

木内さんは今回、A先生にどんなことを占ってもらったんですか。

木内 ひと通り、オーソドックスなことを聞くようにしていました。恋愛関係や仕事運についても聞きましたね。鑑定時間は占い師によって異なりますが、1時間ってけっこう長いじゃないですか。時間が余ってしまったので、ちょうど家のリフォームを依頼した、建築士とトラブっていた時期で、その恨み節を聞いてもらったりもしていました。「この人、いったいどういう人ですか」と、彼に関して、なにか不幸な要素を見出したかったのかもしれません(笑)。

撮影/杉山和行
木内昇(きうち・のぼり)1967年東京生まれ。出版社勤務を経て独立し、インタビュー誌「Spotting」を創刊。編集者・ライターとして活躍する一方、2004年『新選組幕末の青嵐』で小説家デビュー。2008年に刊行した『茗荷谷の猫』で話題となり、早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞を受賞。2011年に『漂砂のうたう』で直木賞を受賞、2013年に刊行した『櫛挽道守』は中央公論文芸賞、柴田錬三郎賞、親鸞賞を受賞した。他の作品に『笑い三年、泣き三月。』『ある男』『よこまち余話』『光炎の人』『球道恋々』『化物蝋燭』『万波を翔る』などがある。最新作は占いを題材とした短編集『』。

中瀬 占い師のところに行く前に聞くことを整理しておくのですが、私も時間が余ってしまうと、最後には3匹飼っている猫の気持ちや体調を聞くこともあります(笑)。