直木賞作家の木内昇さんの短篇集『』(新潮社)には、「占い」をテーマに、女たちの悩みや苦しみ、手に余るほどの欲求を描いた7編が収録されている。

出口の見えない悩みを抱えたとき、見ず知らずの占い師に救いを求める人は少なくない。いや、見ず知らずの相手だからこそ、思いを吐露でき、素直にアドバイスを聞くことができるのかもしれない。占い師に個別に相談するまでには至らなくても、朝の情報番組の占いをチェックし、一喜一憂する人はたくさんいるはずだ。そう、人は時として、そして、知らず知らずのうちに「占い」の持つ不思議な力にとりつかれてしまう。

ある時は心強い味方になってくれ、あるときは私たちを振り回し、困惑させる「占い」と、どう向き合い、どう付き合っていけばいいのか。木内さん、そして、新潮社の編集者であり、自他ともに認める占い好きの中瀬ゆかりさんに、「占いに振り回される女と、味方にできる女の違い」をテーマに語ってもらった。

「占いには行ったことがなかったんです」

中瀬 今回、なぜ「占い」をテーマに小説を書こうと思ったのですか。

木内 長編を書き終え、何か短編を、となった時に、迷える女性の話、そして、『よこまち余話』(中公文庫)のような不思議な話を書きたいと思い、「占い」というテーマを思いつきました。心理学を勉強していたので、自分を持っている自立した女性が、どんな風に「占い」にはまっていくのかというところにも興味がありました。

とはいっても、雑誌の星占いのページには目を通すものの、対面での占いには行ったことはなかったんです。ただ、私は動いて体にしみこませたいタイプで、(明治時代の野球少年たちの日常を描いた)『球道恋々』(新潮社)の時には、高校、大学でやっていたソフトボールを再開したんです。「占い」をテーマにするにあたり、どんな流れでどんな風に受け答えをするのだろうかと、取材を兼ねて、手相、霊感、タロットなどに足を運ぶことにしました。中瀬さんにも霊能者の方を紹介してもらいましたよね。

中瀬 いろいろ行かれてみて、いかがでしたか。

木内 いろいろな占い師に視てもらっているうちに、「いったい誰が言っていることが本当なのか」と思いはじめ、占いに依存してしまう心理を少し垣間見たような気がしました。

撮影/杉山和行
木内昇(きうち・のぼり)1967年東京生まれ。出版社勤務を経て独立し、インタビュー誌「Spotting」を創刊。編集者・ライターとして活躍する一方、2004年『新選組幕末の青嵐』で小説家デビュー。2008年に刊行した『茗荷谷の猫』で話題となり、早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞を受賞。2011年に『漂砂のうたう』で直木賞を受賞、2013年に刊行した『櫛挽道守』は中央公論文芸賞、柴田錬三郎賞、親鸞賞を受賞した。他の作品に『笑い三年、泣き三月。』『ある男』『よこまち余話』『光炎の人』『球道恋々』『化物蝋燭』『万波を翔る』などがある。最新刊は占いを題材とした短編集『』。