新型コロナ、日本の対策を「評価」する時に知っておくべきこと

日本の公衆衛生に必要なのはCDCか?
奥村 貴史 プロフィール

その背景として、以下の3点が指摘できる。

まず、「公衆衛生分野に関わる情報技術の専門家の不在」がある。たとえば、米国の公衆衛生大学院には情報系の研究者の在籍が増えており、トップ3校に限れば統計学等を除いて平均12科目もの講義が設置されている。その一方、日本の公衆衛生大学院では平均1.4科目と大きな差がついている(2017年日本公衆衛生学会シンポジウム「国際的な視点を持った公衆衛生医師の育成を目指してⅢ」筆者指定発言より)。

次に、公衆衛生を担う行政機関では、定員と保健所などの組織削減を継続的に進めながらも、それを補うような「業務の生産性を上げるための施策」が欠如してきた点が挙げられる。たとえば、健康監視のように、たくさんの人手を要する労働集約的な業務があることを認識していながら、その効率的な解決のための検討体制の構築を進めなかった。

さらに3点目、日本の行政機関における業務慣行である「メール添付するExcelファイルを通じて情報集約を行うスタイル」の非効率がある。これは、些細なことだと驚かれる方もいるかもしれないが、これにより、各種の情報を医療機関から集め中央官庁に集約されるに至るまでの各段階に情報共有のための手作業が発生し、極めて多忙な行政官をさらに疲弊させることになる。

業務をPC作業化することこそが「業務の情報化」だと考えられた結果、多くの単純作業が手作業として残され、情報集約の効率を落としている。

〔PHOTO〕iStock
 

新型コロナ対策の評価

以上を踏まえたうえで、日本でなされた新型コロナ対策の評価という本題について述べよう。

新型コロナウイルス感染症のために、トイレットペーパーの買い占めや転売に加え、PCR検査を希望する患者が受けられないといった問題が生じ、社会的な混乱状況が続いている。

しかし、韓国における患者の爆発的な発生や、イタリア等欧州における医療体制の破綻等の報道がなされるにつれ、わが国の対応は完璧ではないものの少なくとも不適切なものではなかったのではないかという評価が得られつつある。では、わが国における新型コロナ対策は、成功したのだろうか?