これからの世界のあり方とは? SDGsという言葉が生まれる前から、未来を見据えて活動してきた人たちがいます。社会のため、環境のため、人のため。目指したのは、地球の明るい未来とサステナブルなライフスタイル。先人たちが示した活動の道しるべに、世界を変えるヒントがあります。

その時々で美しい季節を感じられる恵まれた自然環境のなかに地域に開かれた施設があります。障がいや支援者という枠を取り払った自由なものづくりの現場を、精神科医の星野概念さんが訪れました。

福森伸
ふくもり・しん(写真左)/1959年生まれ。〈しょうぶ学園〉統括施設長。2003年から現職に。奥様の副施設長とともに園を運営する。1992年、既製品のシャツなどに刺繡を施す「nuiproject」をプロデュース。初の著書『ありのままがあるところ』が発売。
星野概念
ほしの・がいねん(写真右)/1978年生まれ。精神科医、ミュージシャンなど。病院に勤務する傍ら、執筆活動、□□□(クチロロ)のサポートメンバーなどの音楽活動も。いとうせいこうとの共著『ラブという薬』が話題。ウェブ、雑誌などでの連載も多数。

誰もが平等に過ごせる、
開かれた地域施設

緑の芝生を落ち葉が彩る〈しょうぶ学園〉の中庭で。建物の外壁には、施設利用者の作品が描かれている。井戸水が流れる小川にはオタマジャクシもいる。

賑やかな鹿児島市の繁華街を北へ9㎞、鳥たちの囀さえずる緑豊かな場所がある。障がい者支援センター〈しょうぶ学園〉ものづくりを大きな柱に、入所寮やグループホーム、デイサービスなどで、支援を必要とする人と支援者とが支え合う、創造的なコミュニティだ。園内には手づくりの家具や看板があちこちに。

入り口から桜並木の小道を進むと、工房やショップが現れる。パン菓子を販売する〈ポンピ堂〉。手づくりの看板がかわいい。この奥に芝生の中庭が。

利用者が働くそば屋やパン屋は地域に開かれ、おいしいと評判。入り口には門扉もなく、中庭を散歩したり日向ぼっこをしたり、日々多くの人が訪れる。週末には入所者もお酒が飲めると聞いて驚いた。ここには施設という枠組みを超えた、心地良い環境がある

以前から園を訪れたかったという精神科医の星野概念さん。障がい者施設にも長く勤めこれまでも興味のある施設を訪問してきた。

石臼挽きの粉を使用した〈ポンピ堂〉の焼き立て食パン。バゲットや菓子パン、クッキーなど、どれも地元の人に好評。焼いた側から売り切れていく。店内には、利用者が描いた作品なども飾られている。

「ある時、施設で精巧な段ボールの工作をしている人が、作品を床に捨てるように置いているのを見て、彼らにはせっかくつくったとか、もったいないという気持ちはなくて本当につくりたくてやっているんだなと衝撃を受けたんです。以来、ものづくりをする人と積極的に触れ合うようになった。その先々で必ず話題に上るのが〈しょうぶ学園〉でした

園芸部の温室。全面に植物が手描きされている。ここで育てられた野菜もカフェなどのメニューに使用される。

施設長の福森伸さんに迎えられ、園内を案内してもらう。点在する工房やギャラリーを巡りながら、利用者に呼びかけてふざけ合ったり、握手をしたり、カメラの前でおどけてみせたり、そのおおらかさに心が解けた。

〈ポンピ堂〉のスタッフ。すれ違いざまにカメラに向かってピース。

「ここでは落ち葉も雑草もそのまま。以前はもっと掃除していたけど、雑草にも小さな花が咲くし、枯れ葉が落ちるのに地面にないのは不自然でしょう。僕はここを森にしたくて

人も自然もありのままに認め、支え合い、つながり合うこと。何気ない言葉が、学園の理念を象徴しているかのように思えた。