数年前、『ワシントン・ポスト』紙の論説ページに、「親は世界の大惨事を、子どもとどう議論すべきか?」という記事が載った。そこには、世界の出来事から8歳の娘を守ろうとした、ある母親の試みが記されていた。この記事を書いたサラ・マラニス・バンダー・シャーフは言う。
「私は新聞を隠して、テレビを消して、ラジオも聴かなかった。悪い出来事の存在を、娘に知らせたくなかったから」と――。
ところがある日、娘がテレビを観てしまい、マレーシア航空370便の話を聞いた。そう、飛行機が北京に向かう途中で、消えてしまった事件だ。娘に事件について尋ねられたサラは、説明せざるを得なかった。
「娘を包んだつもりでいた保護膜が永遠に破れてしまったわ。縫い合わせることもできないし、私が膜をこしらえてた、とバレちゃった」
世の中には悪いこともある、と一度も警告されなかった子どもは、虹と子犬でいっぱいの世界から、邪悪なものも存在する世界へと一気に突き落とされる。
このギャップは大きい。