新型コロナとの戦い「公務員」を切り捨て続けてきた日本のツケ

「市民を雇わない国家」の行方
小谷 敏 プロフィール

公務員の数を削減したために、官公庁のパフォーマンスが低下し、行政サービスが劣悪化する。そのことが人々の怒りを買い、それを受けて公務員の一層の削減が進められていく。2000年代以降のこの国は、公共部門をめぐる「負のスパイラル」と呼ぶべき状況に陥っているようにみえる。

公的部門の削減をもたらしたものは、緊縮政策である。そして、不況下での緊縮と増税に痛めつけられた人々のジェラシーが、公務員数の削減を支持する世論を生みだしてきた。「負のスパイラル」を克服するためにいま求められているのは、脱緊縮の思想に基づいた経済政策なのではないか。

新型コロナウイルスとの戦いとは、ウイルスや疾病そのものとの戦いだけにとどまらない。ウイルス禍がもたらした経済的混乱との戦いが大きな比重を占めている。製造業は、中国との貿易の途絶によって生産が成り立たない状況が生まれつつある。内外の観光客の激減やイベントの自粛によって、観光業とサービス産業は大きな打撃を受けている。

学校の休校のために、子どもを預けることのできないシングルマザーやフリーランスの人たちは、収入の道が閉ざされかねない危機に直面している。経済の混乱は国内だけではなく世界にも広がり、いまや大恐慌前夜の雰囲気さえ漂っている。

 

政府があらゆる手立てを尽くして経済を下支えしなければ、ウイルスとの経済面での戦いに勝つことはできないだろう。ウイルス禍を克服した後のこの国が、「市民を雇う国家」に変貌していることを、切に願うものである。

【註】
*1ボランティア不足深刻 『一日でも参加を』」時事ドットコム 2019年11月5日
*2千葉小4死事件 児相が「虐待の専門家」に慣れない理由」NEWSポストセブン 2019年2月23日
*3 今野晴貴「新型コロナ対応 厚労省の53%が非正規公務員の現実」YAHOO!ニュース 2020年2月27日
*4 前田健太郎『市民を雇わない国家 日本が公務員の少ない国へと至った道』東京大学出版会、2014年
*5 小谷敏『ジェラシーが支配する国 日本型バッシングの研究』高文研、2013年

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