新型コロナとの戦い「公務員」を切り捨て続けてきた日本のツケ

「市民を雇わない国家」の行方
小谷 敏 プロフィール

2000年代には、公共部門に対する不信感をポピュリスト的な政治家が煽り立てる流れが生じていった。2005年に時の小泉純一郎首相は、郵政民営化をシングル・イッシューにして衆議院を解散し、総選挙に打って出た。郵政民営化の是非など本来は普通の人たちにとっての関心事とはなりえない争点である。

小泉はこの選挙で、「26万郵政職員の公務員的特権の剥奪」を叫び、自民党が単独で296議席を占める地滑り的な圧勝を収めた。小泉の慧眼は、長引く不況の中で人々にもたれた、身分の安定した公務員へのジェラシーを鋭く見抜いていた。郵政民営化の是非などには関心がなくとも、郵政職員から公務員的な保障を奪い去るという提案には、多くの人が支持するという小泉の計算は見事に当たった。

大阪府知事と大阪市長を務めた橋下徹も、公務員の削減と給与の引き下げを主張し続けることで、高い人気を博していた*5

民主党政権も同じだった

小泉政権の一連の新自由主義的な改革が押し広げた格差に対して批判が高まる中で、2009年には、自民党から民主党への歴史的な政権交代が実現している。民主党政権の鳩山首相は、「新しい公共」という理念を標榜していた。民主党政権は、「コンクリートから人」へというスローガンを打ち出し、子ども手当や高校無償化を実現していったのである。

 

しかし、「官から民へ」というスローガンも掲げていた民主党政権は、公共部門(もしくは官僚機構)への敵意を小泉政権と共有していた。各省庁、各部局の税金の無駄遣いを公開の場で民主党の国会議員たちがサディスティックに糾弾する「事業仕分け」は、政治的スペクタクルとして高い人気を博した。

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