新型コロナとの戦い「公務員」を切り捨て続けてきた日本のツケ

「市民を雇わない国家」の行方
小谷 敏 プロフィール

厚労省内部には、感染症対策を担う「国立感染症研究所」があるが、ここに所属する研究者は2013年の312人から2019年には294人に減らされており、アメリカ疾病予防センター(CDC)と比較すると、人員は42分の1、予算は1077分の1でしかない*3

新型コロナウイルスもさることながら、公共部門の脆弱さも、また一つの「国難」であると考えるのは私だけであろうか。

市民を雇わない国家

「日本は公務員のとても多い国だ」「官公庁に雇われて、「親方日の丸」でぬくぬくと暮らす役人たちの、非効率な「お役所仕事」が社会や経済の足を引っ張っている」——人々が抱いたそうした思い込みが、2000年代以降の公共部門削減の背中を押していった。

表1をご覧いただきたい。人口1000人あたりの公務員の数は、36.7人と日本が主要国の中で突出して少ない。89.5人もいるフランスの4割ほどしかいない。実は日本は公務員がとても少ない国なのである。

【表1】

政治学者の前田健太郎は著書『市民を雇わない国家』で、日本の公務員の数が少ない理由を明快に説明している。他の先進諸国が公務員数の抑制に走ったのは、「小さな政府」を志向する新自由(保守)主義が台頭した、1980年代になってからのことである。

これに対して日本では早くも1969年に国家公務員の総定員法が施行されている。なぜか。戦後、公務員の争議権を禁じた代償として人事院勧告に従って、民間給与を指標としながら客観的に公務員給与が決定されるようになった。経済成長に伴う公務員給与の増大は、「財政硬直化」の一因となっていた。公務員給与の伸びを抑えるためには、公務員の総数を抑制しなければならなかったのである。

 

1969年に公務員の定数が定められる。地方自治体もこれに倣って職員増を抑制した。このことが、日本が公務員の少ない国になった原因である。

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