現代の仕事においてパソコンに向かっている時間は長い。しかも時間内にできるだけ多くの仕事をこなそうとすると、その分、ずっと同じ姿勢で、根を詰めすぎてしまうこともある。
フィンランドでも休憩時間をいかに効果的にとるかが考えられてきた。その一つの例が、「タウコユンパ」。タウコは休憩、ユンパはエクササイズの意味である。
タウコユンパで思い出すのは、私が留学していた2000年代初頭の大学内での光景だ。午後2時ごろになると、研究室の廊下をスポーツインストラクターが「ピーッ」と笛を吹いて回る。するとそれぞれの個室から人がでてきて廊下の踊り場に集まり、インストラクターの声に合わせてストレッチや軽い運動が始まるのだ。時間にして5分もかかってなかったと思う。終わるとまたそれぞれのオフィスに戻っていく。
一般の企業や省庁でもこの習慣はある。友人の企業ではピラテスのインストラクターの資格を持っている社員が音頭をとって、毎日10分、簡単なエクササイズをしている。大使館では、週に一度、スティックエクササイズと呼び、ポールを使ってストレッチをする。プロや外部のインストラクターがいるわけではないので、自主的に声をかけたり、誰かがボランティアで号令をかけて動きを指示したりする。
こういったエクササイズは決して強制的なものではなく、タイミングが合わなければ参加しなくともいいし、気分が乗らなければやらなくともいい。だがたった5分でも、いい気分転換になるし、何よりも凝り固まった体がほぐれるのは気持ちがいい。
フィンランドの労働衛生研究所が2019年4月に発表した職場でのエクササイズアプリの実証実験によると、職場で2~3分のエクササイズを、1日3回アプリを通して半年間体験してもらったところ、明らかに座りっぱなしの時間の減少につながった。
そして仕事の疲れからの回復促進、体の緊張や痛みの緩和、エネルギーの増進、疲労や物忘れの緩和といった効果を生んだ。さらに生産性もあがったことで組織にとっては経済効果もあり、参加者にとっては皆で一緒にエクササイズに取り組むことで、一体感も高まったそうだ。