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55歳女性、認知症の母の「シングル介護」は想像以上に地獄だった

それは突然やってきた

2025年には、65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症になるという推計がある(※1)。背筋が凍る思いがした。認知症以外も含めたら、4人に1人、3人に1人が要介護状態になるかもしれない。近い将来、たった一人で両親を背負い込むことになるかもしれない。そんな事態に備えている人がどれほどいるだろう? そのときは突然やってくる。シングル介護の現実を当事者に訊いた。

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84歳の母と、55歳の娘

「学校、遠いの?」

84歳の母親は、朝から同じ質問を繰り返す。関西在住、55歳の犬飼夕子さん(仮名)は、内心面倒くさいと思いながらも、何度も「うん」と応える。

「あんた、23歳か?」

唐突に母親が言った。犬飼さんはまた、「うん」と応える。なぜなら、アルツハイマー型認知症患者の話は否定しないほうが良いからだ。

父親は20年以上前に亡くなっているので、母親はひとり暮らしだった。母親の妹である叔母も早くに夫を亡くしており、2人はちょくちょく遊びに出かけたり、叔母が泊まりに来たりしていた。

もともと犬飼さんの母親は、物を大事にしすぎて、どこにしまったか判らなくなることがある。そのため、アルツハイマー型認知症と診断される1年ほど前から「通帳がない」「印鑑がない」ということが2〜3度あったが、結婚して家を出ていた犬飼さんは、「またか」くらいにしか思わなかった。

しかし2015年6月、叔母から突然、電話があった。

「テレビで認知症の初期症状を見たんだけど、もしかして…と思って」

犬飼さんは「まさか」と思いつつも、急いで認知症外来に予約を入れる。7月、母親はアルツハイマー型認知症と診断された。

 

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※1:平成29(2017)年度の高齢者白書
2012年は認知症患者数が約460万人で、高齢者人口の15%だった。しかし2025年には20%、5人に1人が認知症になるという推計がある。