北朝鮮はなぜ、厳しい制裁下でも「経済発展」しているのか

「自力更生」を目指して(前編)

新しいライフスタイルが浸透中

チジミは客の前で焼いている。串焼き・餃子・コロッケなど30種類ほどの総菜がカウンターに並ぶ。ハンバーガーは3500北朝鮮ウォン。若い女性たちが、それを次々と買っていく。持ち帰る人もいるが、温めてもらってイートインスペースで食べる人も多い。

「こうした店が増えたことで、女性たちの家事がずいぶん楽になりました。トウガラシを使った辛い惣菜が人気で、1日に数百人の客が来ています。忙しい主婦が買いに来るので、こうした惣菜屋が増えているんです」

売り場の女性支配人はそう語る。

取材で訪れる個人宅では、出前で取った料理が出されることも普通になった。こうしたライフスタイルの大きな変化には、平壌を中心とした人々の生活に経済的なゆとりが生まれていることが見て取れる。

北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)は、「国連安全保障理事会」などから極めて厳しい制裁を受けながらも、緩やかな経済発展を続けているようにみえる。その理由を解き明かすために3回にわたり、延べ38日間かけ、首都・平壌(ピョンヤン)と地方都市でこの国の経済状況を取材した(写真はすべて筆者撮影)。

高額商品が並ぶ新店舗

そのことがより明確に表れているのが、次々とオープンしている高額商品を売る商業施設である。1986年開業の大聖(テソン)百貨店は、昨年4月にニューアルオープンした。

5階建てで、1階は食料品スーパー、2~3階では国産品と輸入品の高級な衣類・宝石・スポーツ用品・家電などを販売している。家電売り場には「パナソニック」「フィリップス」などの大型テレビが並ぶ。店内は明るくおしゃれで、商品の品ぞろえは豊富だ。

デザインの良い国産婦人靴は1700北朝鮮ウォンだったが、「パナソニック」の64インチテレビは26万9900北朝鮮ウォンである。

 

なお北朝鮮ウォンは、国定レートで1北朝鮮ウォン=約0.9円だが、市場レートでは0.013円と思われる。外国人が入ることができる商店の商品価格は、かつてはユーロ表示が多かったが、今ではほぼ北朝鮮ウォンに変わっている。