ねずみ男の流儀~現代を生きぬく処世術とは

嗚呼、生き様が目にしみる
堀田 純司 プロフィール

人間社会にとけこむ日本の妖怪たち

「アンダーワールド」というアメリカの映画シリーズでは、ヴァンパイアと狼男の一族の、永遠の戦いが描かれます。かっこいい。しかしこれを日本に置き換えて「鬼族と天狗族が昔から争ってきました」と言われても、どこか牧歌的で燃えない。

貴族的な西洋妖怪とくらべて日本の妖怪は庶民的(実際、西洋妖怪が攻めてきたときに「ダサい」と悪口をいわれたこともある)。砂かけばばあや一反木綿はもとより、子なきじじいとか、小豆洗いとか、ただ豆腐を運ぶだけの妖怪とか、怖いんだか、怖くないんだかよくわからない。

ですがそれこそが彼らの魅力で、ときに人間社会に溶け込んだり、馴染もうと苦労したり、はたまた承認欲求に取り憑かれたりして、とても親しみやすい。もちろん人間を支配しようとするスケールの大きい妖怪もいますが、彼らもまた、ただ残忍なだけではない。

小説版だけのダークストーリー

見た目から面白いのが、水木氏の描いた「妖怪ワールド」の凄みです。しかし文字表現でも「鬼太郎」の世界は面白い。

第6期アニメーションの脚本家の人たちが中心となって参加する「小説 ゲゲゲの鬼太郎」シリーズが刊行されているのですが、小説ならではの細かい心理描写にも、妖怪たちは意外なほど馴染みがいいです。

3月刊の第二集「朱の音」では5編を収録。妖怪の棲み家が異界であるならば、現代ではオンラインという異世界もある。そこでの危ない「異文化接触」を描いた「怨ライン奇譚」

もう私得、池袋を支配するボスを相手にねずみ男が立ち回る「ねずみ男ハードボイルド」

アニメーション制作陣の姿勢がほの見える点でも興味深いメタフィクションの傑作「怪物マチコミ」

いわれてみれば彼の名はM。最初期から登場する吸血鬼ラ・セーヌの、「下僕」視点で描く「Mと呼ばれた男 ラ・セーヌ外伝」

 

児童虐待。あまりに悲しい社会の状況に踏み込んだもうひとつの物語「陰摩羅鬼ー外伝」

幕あいに登場する「鬼太郎の『だから言ったじゃないか』シリーズ」もとても楽しいです。