人が死にゆく戦場で新たな命を産み、カメラを回し続けた女性監督

娘のために、命がけで撮った

2月、シリア人のお父さんと小さな女の子の動画がSNSで世界中に拡散された。

お父さんはアブドゥラ・モハマドさん(32歳)。撮影時、モハマドさん一家はシリア北西部イドリブ県サルマダに住んでいた。昨年12月から政府軍は反体制派の最終拠点となっている同県への攻勢を強め、多くの民間人が激しい空爆や砲撃にさられている。

戦闘機かな? 爆弾かな?

動画のなかでモハマドさんは娘のサルワちゃん(3歳)に尋ねる。そこだけ見ると、親子でクイズをやっているような、よくある心あたたまる光景ともとれる。サルワちゃんが「ばくだんよ」と答えた直後、炸裂音が響き、彼女は飛びあがって大笑いする。モハマドさんはサルワちゃんの恐怖とストレスをやわらげ、戦争トラウマに苦しんだりすることがないよう、爆発の音がすると声を出して笑うゲームを思いついたのだった。

この動画はネット上で大反響を呼び、多くのコメントが寄せられた。「泣けてくる」「切ない」「この家族に平和を」──いかにも善人らしい言葉が並んでいる。でも、それで涙腺をゆるませて終わりにしてはいけないんじゃないか。私たちはこの状況に責任がないと言い切れるのか。そんな苦い何かを心に残した人たちに、ぜひとも観てほしい作品がある。

本年度のアカデミー賞 長編ドキュメンタリー部門にノミネートされ、カンヌ国際映画賞 最優秀ドキュメンタリー賞を受賞した映画、『娘は戦場で生まれた』だ。本作を観た多くの人は、その強烈な映像にかつてない衝撃を受けるだろう。