マスクを求めて集まった人々(photo by gettyimages)

新型コロナ感染拡大の韓国では、マスクが貨幣になっている?

マスク不足で高まる文在寅政権への不満
新型コロナウイルスの影響で店頭から消えてしまったマスク。実は、日本と同じく韓国でもマスク不足が深刻化しているという。韓国在住のジャーナリスト・金敬哲氏が、韓国の最新「マスク事情」をレポートする。

有機卵4個とマスク1枚を交換しませんか」

世界的な「マスク品薄」現象は、韓国も例外ではない。 3月4日、あるインターネット・コミュニティに、「物々交換」を求める書き込みがアップされた。投稿したのは、韓国の東南部に位置する蔚山(ウルサン)市に住む男性だ。

「私はコットン・マスクを洗って使っていますが、88歳の祖母には良いマスクを着けさせてあげたい。うちの鶏は抗生剤を使わず、放牧で育ててきました。この鶏が産んだ卵は、通常一つ3000ウォンします。一度も抗生剤を摂ったことのない健康な地鶏が生んだ有機卵4個と、KF94マスク1枚とを交換しませんか。交換場所は***です」

 

KF94マスクとは、0.4㎛の粒子を94%以上遮断できる防疫用マスクのことで、「KF」は韓国の食品医薬品安全処の認証を受けたことを示している。新型コロナウィルスの発生初期、韓国の保健当局はKF94マスクの着用を推奨していた。

投稿者が書き込みとともに掲載した写真には、卵と一緒に、おばあちゃんのしわくちゃな手が写っており、見る者の心を揺さぶった。写真が効いたのか、すぐに「卵12個とマスク3枚を交換したい」というコメントがアップされた。続いて、「おばあさんのために、私も無料でマスクを一枚渡したい」という、温かい書き込みもあった。

韓国No.1の中央紙「朝鮮日報」は、「新型コロナの拡大でマスク着用が必須となったが、マスクが品薄で買えなくなり、物々交換でマスクを手に入れようとする人が続出している」と伝えた。また、「インターネット上では『マスクは貨幣』だという声が広まり、マスクをまるで貨幣の単位のように表現する『1MSK(マスク1枚)』という用語も登場した」と報じている。

なぜそこまでマスクが足りないのか?

1月20日に韓国内で初の新型コロナ感染者が発生すると、防疫当局は感染予防のため、マスク着用を積極的に推進した。マスクを着用する習慣があまりなかった韓国民のため、①できるだけ微細粒子を遮断できる防疫用マスクを使うこと、②再使用は禁止、③コットン・マスクは推奨しないなど、マスクの使い方を詳しくPRした。

マスクの着用を推奨するコロナ予防ポスター(撮影:金敬哲)

全国民がマスクを着用するようになり4連休が終わった1月28日頃から、マスクの価格が高騰し始めた。韓国政府は、マスクメーカーに1日の生産量を800万枚から1000万枚へ増産することを奨励したが、韓国人の総人口が5200万人であることを考えれば、依然として足りない数字だった。

韓国でも多くの人がマスクを着用している(photo by gettyimages)

新型コロナの発源地である中国に韓国産マスクが大量に流れたのも、マスク品薄の大きな原因として挙げられる。野党第1党である未来統合党の趙慶泰(チョ・ギョンテ)議員は、関税庁の資料を引用し、マスクの中国への輸出額が、2019年12月に比べ、2020年1月は約100倍、2月は約200倍にもなっていると主張。韓国最大のマスクメーカーの代表も、メディアからのインタビューに「1月末から2月中旬頃までに約5億枚のマスクが中国へ流出した」と証言し、これを契機にマスクメーカーの在庫が底をついたと説明した。