トイレットペーパーを奪い合い、店員に暴言を吐き散らす人々の心理

コロナ騒動で見えた「カスハラ」の実態
池内 裕美 プロフィール

「在庫は十分」と言われても…

次いで注目すべきは、「噂」が流布する背景だ。社会心理学では、古くから“内容が重要”で“証拠が曖昧”な噂ほど流布量が大きいことが認められている(Allport & Postman, 1947 南訳 1952)。

もちろん一番悪いのは“トイレットペーパーが品切れする”といったデマを流した人たちであるが、空っぽの陳列棚を映しながら“在庫は十分ある”といった相矛盾するようなメッセージを届け、消費者(特にテレビの影響を受けやすい高齢者)の不安をあおり、混乱させたメディアの責任も大きい。特にオイルショックを経験した世代の不安感は、ひと際強いことだろう。

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また、メディアでは“商品自体は十分ある”と報じられても、消費者が実際に店頭を訪れると“完売している”といった状況、すなわち何を信じてよいか不確実な状況に置かれた時、人は他者の行動を「社会的証明」として参考にする。つまり、“みんな買っているから自分も買っておこう”といった同調行動が生じやすくなるのである。

 

“お一人様2パックまで”が拍車をかける

しかも、店頭で“お一人様2パックまで”といった貼り紙がなされていたりすると、「個数限定」に対する心理も同時に働く。そもそも期間限定や数量限定などの限定商品は魅力的に映るわけだが、その理由は少ないものほど高い価値が感じられる心理現象、すなわち「希少性の原理」に基づく。

現在のマスクに対する市場価値が良い例であろう。定価の何十倍もの高額マスクを、“貴重な商品だから高くても仕方がない”といって購入する人たちの心理は、まさに希少性の心理で説明できる(ようやく高額転売禁止の方針が固められたが)。