トイレットペーパーを奪い合い、店員に暴言を吐き散らす人々の心理

コロナ騒動で見えた「カスハラ」の実態
池内 裕美 プロフィール

まずは買い占めが起きた心理的な原因、すなわち「買い占めの心理」を紐解いてみよう。このところ、毎朝のようにテレビでは、商品を手に入れるために長い列を作る客たちの姿が映し出される。こうした事態を、“本当に令和2年の映像か”、“昭和95年か何かの間違いではないのか”と揶揄する言葉も飛び交っている。なぜ、消費者たちは一斉にトイレットペーパーを買いに走ったのか。

以前、筆者は20~60代の男女453名に、歯ブラシや石鹸などの日用品のストック数について調査を行ったことがある。その際、トイレットペーパーにおいては、日常的にため込み志向の強い人はそうでない人に比べ、平均して約3個多くストックしていることが見いだされた(ため込み群:11.6個、非ため込み群:8.7個)。

〔PHOTO〕iStock

こうしたため込み志向の強さは、なくなることへの不安が根底にあることが認められている(池内,2014)。今回の買い占め行為の一端は、日常的にため込み志向の強い人が、空っぽの陳列棚の様子がテレビで映し出されることでますます不安になり、店頭に駆け込んだことで生じたといえよう。

 

彼らにとっては、仮に自宅に10個トイレットペーパーが残っていても、“あと10個しかない”のである。特に不安や強迫傾向の強い人は、トイレットペーパーを“使うこと”ではなく、“買うこと”自体が目的になるといった、強迫的購買(買い物依存)に近い心理が働いているといえる。そうなると、いくらメディアで“冷静な行動を”と言われても、聞き入れる余裕や理性など働くわけがない。