「明日殺されるのに…」獣医大の驚くべき実態、学生たちの苦悩

全国の獣医大を取材してわかったこと
森 映子 プロフィール

麻酔が切れてラットが暴れ出し…

さらに最近の取材で、ラット、マウスなどの実習で不適切な扱いがあることが分かった。

例えば北里大では、教員がラットに麻酔を実演した後にやるのだが、大学関係者によると、「薬を充満させた瓶の中に入れて麻酔をかけたのですが、学生は教員から麻酔薬の量について明確な指示もなく、加減が分からず適当に入れました。すると解剖の途中で麻酔が切れてラットが暴れ出した。二酸化炭素を充満させた瓶に入れて死なせたが、腹から血が流れ出していた。その場で、『やばいね~』『殺害だね』という声が上がりましたが、そのままラットの体を切り続けている学生もいた」という。

術後の処置にも問題を感じた。北里大の実習では、ラットの卵巣を切除してクリップで縫合後、ケージに戻したが、「ケージは糞尿だらけ。さらに複数のラットを同じケージに入れるので、クリップをかじり合って傷口が化膿してしまった」。

金網のケージ内に、巣箱など動物の行動欲求を満たす環境エンリッチメントの用具は何もなかった。

獣医学的ケアに詳しい関係者は「金網は足裏を痛めます。せめてタオルを入れれば、寒さから身を守れて、くるまって眠ることもできます。本来は、飼い方と術後ケアも含めての教育ではないのでしょうか」と指摘する。

この他、脊髄反射を見るために、上顎をはさみで切って頭がない「脊髄ガエル」を作る生理学の実習がある。「切る場所がずれると、『はい、別のカエル』と次々と取り換えた記憶が今も頭から離れない」と語る学生もいる。

私はこれらの事実確認のために、北里大の高井伸二獣医学部長に今年2月に質問書を送ったが、返答はなかった。

 

学生たちの「本音」

保定(動物が動かないように押さえておくこと)や腹腔内投与などの練習ができるマウスの模型をいくつか導入した獣医大でも、必ずしも模型を十分活用しているとはいいがたい実態がある。

麻布大(神奈川県相模原市)ではマウスを使う実習で、模型はあったが、「教員は『模型もありますよ。高いから壊さないでね』という感じで、全員が練習をみっちりやりなさい、という感じではなかった」と学生。

生きたマウスは一人1匹ずつ与えられたが、「しっぽに生理食塩水を静脈注射する練習でも暴れたので、何度もしっぽをひっぱり、マウスが疲れ果てるまで繰り返してました」。最後は麻酔薬を過剰投与して安楽死させ、解剖して臓器の位置を確認した。

実験マウスは「どんどん繁殖するので時々間引きされています。毎日『今日実験、実習に使われるのはこの子』と見送っているうちに、動物実験に嫌悪感を覚えるようになった……」と打ち明ける学生もいた。

有精卵の中にウイルスを投与して1週間後に胎児を取り出す実習もあった。「グロテスクだった。胎児には血管が通い、ひよこの形をしていた。細胞培養するため臓器を次々取り出して、バケツにどんどん死体を捨てた。嫌になりました」