マタハラは「二重苦」

さゆりさんは会社の社労士だけでなく弁護士にも相談し、どうにか減給の取り下げに応じてくれるよう動いた。しかし、「会社とこうして戦っているうちに、だんだんアホらしくなってきたんです。つわりで吐き気とめまいで辛かったのもありますが、すっかり疲れてしまって」とさゆりさん。彼女が戦意を喪失しはじめた頃、最初に減給を提案されてから、すでに3ヶ月が経っていた。

つわりと精神的ダメージのダブルパンチ。誰だって、戦うことに疲れてしまうだろう。

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妊娠してこれでは、子どもを産んで復帰したとしても、先が思いやられる。もう、この会社では働けない、働きたくないと思いました」

確かに、この職場では、子どもの都合で早退したり遅刻したりすることに対して、理解が得られそうにない。さゆりさんは退職を決めた。産休に入る2ヶ月前のことだった。

退職したら国からの手当がもらえない…

あと2ヶ月さえ耐えれば産休に入れるのにもったいない、と思う人もいるかもしれない。でも、筆者も経験者だからわかるのだが、妊娠中のストレスは非妊時のストレスとは比べものにならないほど辛い。もし食欲がなくなってしまえば、自分だけでなく胎児にも影響を及ぼす。辞めたのは、母子を守る意味でも賢明な判断だ。

彼女はその後、妊婦でも受け入れてくれる転職先を探した。会社員でなくなれば、育児で休んでいる間、国からの手当が支給されないからだ。それだけでない。保育園に入るにも、会社員の方が優遇されるため、このままだと入園が難しくなってしまう。

とはいえ、求人を探してエントリーし、選考を受けるという一般的な転職のやり方では、あっという間に2ヶ月が過ぎてしまう。退職してから間を空けずに転職するには、急を要した。さゆりさんは友人や夫など、人伝てで受け入れてくれる会社を探した。すると、彼女の状況を理解してくれた会社が受け入れてくれることになり、そこへ入社した。勤務できる期間はたったの2ヶ月だけだったが、その後、無事に産休に入った。