「代表から、『周りへの公平性もあるからね』と言われました。今まで通り勤務していたのに、妊婦になった途端、それがハンデとみなされてしまったんです」

“公平性を期す”ために減給する。妊婦であるさゆりさんを差別する理由が「公平性」とは、なんとも皮肉である。

彼女と代表のやりとりの間には、人事も入っていた。

「人事は組織的に代表の下についていました。私の訴えに『うんうん』と頷きながらも、代表に立ち向かうことはせず、板ばさみ状態でした。頼りになる存在とは思えませんでした」

さゆりさんは会社の中で孤立した。「減給をしたい」という会社の意思は、もう彼女には痛いほど伝わっていた。しかし実際、減給はされなかったという。これは一体どういうことなのか。

会社の悪質な“追い込み”

減給がなかったこと、これ自体はいい話のように見えるが、実はそうではない。妊娠を理由とした減給は違法である。減給すれば、給与明細にも反映されることから、証拠が残る。一度でも強引に減給してしまえば、会社は法的に罪を問われるのだ。

「実際に減給はされないけれど、『減給したい』という意思表示は続きました。だんだん、会社に行くのが億劫になっていきました」

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会社が妊娠による減給は違法であることを知り、さゆりさんを精神的に追い込むことで退職させたいと思っていたとしたら、減給するより悪質だ。