編集部注:こちらの記事は2020年3月7日に公開された記事です。「マスクが新型コロナの予防にはならない」ということをお伝えし、まずは買い占めをやめ、最も必要な医療従事者などの手に渡ることが必要だということを伝えるためものです。飛沫を防ぐので、マスクは他人に「感染させることを防ぐ」効果として有効です。

また、緊急事態宣言の出た4月7日現在は、誰もが「自分が感染している」前提で行動をしなければならず、マスクをつけることが大切な状況です。「予防になるものではない」という理由を可視化したものとしてお読みください。

新型コロナ肺炎のせいで、ドラッグストア前には毎日行列ができています。
私は幸い、花粉症持ちではありません。今のところ、風邪にもインフルにも新型コロナ肺炎にもかかっていない。喉も痛くないし、鼻水も出ていないし、身体もだるくないし、熱もない。要は「なんでもない」。だから、マスクをしていません。

「マスクをするのは、社会的なマナーじゃない?」

そうでしょうか? 今、各メーカーが大車輪でマスク生産をしても(工場のラインはそう簡単に変更できないし、原材料も急には確保できない)、「なんでもない人」がマスクをつけたら日本中でマスクが足りなくなります。

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以下は、私が以前、日本で数少ない「風邪の専門医」である感染症医の方に、とても丁寧に説明してもらった「患っていない人に、なぜマスクがいらないか」「新型コロナ予防にマスクの効果がない理由はなにか」という原理です。
その先生=岸田直樹医師(感染症コンサルタント/北海道科学大学薬学部客員教授にして、現在北海道でもっとも新型コロナ肺炎患者を診察している)は、現在、「コビットファイター」として、連日、ツイッターで有益な情報をつぶやいています。
https://twitter.com/kiccy7777

私がこの原稿を書こうと考えたきっかけは岸田先生の取材ですが、以下の文責はすべて思いっきり文系の私にあることを先にお断りしておきます。

ほとんどのウイルスは手から入る

「新型コロナ肺炎(感染症名COVID-19)」は、新型コロナウイルス(ウイルス名SARS-CoV-2)がヒトからヒトへ「飛沫感染」して発症します。

まだわかっていないことが多いですが、重症化する患者さんは、風邪(上気道炎。喉の痛みや発熱など。鼻から喉までの炎症です)のような症状から肺炎(下気道炎。気道から肺までの炎症の一種です)へと移行してしまうようです。文系的理解だと、身体の入り口のほうの炎症が、より内臓のほうへと入ってきちゃう、というイメージでしょうか。

 引用:wikipedia/下気道より

カゼやインフルエンザも同様ですが、身体の入り口(目、鼻、口)にウイルスが侵入する経路とは? 岸田先生いわく、ほとんどは「手から口(鼻、目)」なんだそう。

たしかに、冷静に考えてみるとわかります。
くしゃみ、せき、唾液、あるいは汗、排泄物など、感染者の身体から出た「飛沫(ウイルス入りの水分)」は、ふつうは直接、相手の顔にかかったりしません。そんな目に遭うのは、つばを飛ばされても顔をそむけられない漫才の相方か、患者さんを治療しているお医者さんぐらいでしょう。

だから感染症の医療関係者は、高密度の医療用マスクをしています。手術用マスクなども同じ原理です。「医療用マスク(N95)は口周りを完全に覆うので、ものすごく息苦しくて、とても日常生活で一日中装着などしていられません」(岸田先生)

飛沫が「何か」(つり革や手すり等)に付着して、さらにそれを触った人の手にくっつく。そして、ウイルスがくっついた手で目や口、鼻まわりを触ったことで、ウイルスが顔まわりに移動し、それを体内に吸い込んでしまって増殖していくのです(=接触感染)

「人間は、5分に1回ぐらいは無意識に顔に手をもっていくものなんです。目をかいたり鼻を触ったり口に手をやったり。だから、ウイルスが人間の身体に侵入する経路として一番危ないのは手、なんです」(岸田医師)

「手で顔を触ったって言っても、口を直接触ったわけではないのに……」と思うかもしれません。でも、人間は呼吸する生き物です。酸素を吸って、二酸化炭素を出す。シロナガスクジラがプランクトンをが~っと吸い込むみたいに、人間は口と鼻からたくさんの空気(微粒子)を吸い込んでいるんです。ウイルスはとても小さいので、口や鼻近くにくっついてれば、呼吸する力で吸い込まれちゃうんですね。

WHOも厚生労働省も繰り返し「手を洗って下さい」と言っているのは、そういうワケなんです。

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