クルーズ船のコロナウイルスは欧州から? 遺伝子解析で「正体」判明

ここまで分かったコロナウイルスの真実
山根 一眞 プロフィール

たとえば、ベトナムでは中国で研修を受けた人が帰国後に感染していることが明らかになったが、感染者の都市と寄港地はだいぶ距離があり、市中感染の可能性はかなり低い。

欧州感染地図WHOが公開している新型コロナウイルスの欧州の感染地図 拡大画像表示

1月25日に香港で下船した乗客が感染元ではないかと言われてきたが、この乗客が咳をしはじめたのはクルーズ中の1月23日からだった。鹿児島を出た翌日で次の寄港地、香港まではまだ2日あったので、この2日間に感染が広がった可能性は大きい。

この乗客は下船後の30日に発熱。新型コロナウイルスに感染していることが判明したのは2月1日だった。

その日、クルーズ船は最後の寄港地である那覇に入港していた。

沖縄観光のために下船した4人の女性乗客が利用したタクシーの女性ドライバーが、後に(13日)に新型コロナウイルスに感染したことが確認された。

もし香港で下船した乗客の検査が速やかに行われ、感染情報がクルーズ船に迅速に伝えられていれば乗客たちの下船観光は制限され、女性ドライバーが感染することはなかったろう。

それは、情報の迅速な共有が重要というGISAIDの願い、趣旨を思い起こさせる。

沖縄の観光は魅力に満ちている。これは首里城公園から望む那覇市街。首里城は焼失したが訪問者が絶えない 拡大画像表示

横浜に帰着後、クルーズ船の乗客乗員およそ3600人は下船が許されず、船内に閉じ込められ、感染者は706人(約20%、延べ4089名の検査結果)に達し6人が死亡し、世界に衝撃を与えた(感染者の死亡率は0.85%)

もっとも乗客乗員のうち、無症状のウイルス保有者は延べ392名(55.5%)だったので、発症した人ははほぼ半数のみだったことになる。

新型コロナウイルスを侮ってはいけないが、根路銘さんが言うように、強毒インフルエンザのウイルスと比べれば蚤のように小さな存在だということを物語っている。

 

一方、このダイヤモンド・プリンセス号で感染拡大したコロナウイルスが、どこから入ったのかは不明のままだ。それが無用の疑心暗鬼や下船者への差別をもたらすことにもなっているのではないか。

だが、GISAIDの「系図」からは、その一部を読み取ることができるのだ。

根路銘国昭沖縄取材2日目の朝、生物資源研究所の所長室での根路銘さん。その発言は、ウイルス研究者、ウイルス哲学者としての思想に満ちていた

「ウイルスの旅路」を読みとる

沖縄取材の2日目、根路銘さんにこう尋ねた。

山根 クルーズ船のコロナウイルスはフランスやイタリア、英国ともつながっていることに驚きました。

根路銘 そう、欧州にも起源があることがわかる。

では、英国やイタリア、フランスのコロナウイルスはどこから来たのか。

それは中国です。中国から欧州に移動したウイルスがクルーズ船のウイルスとつながっていることがわかります。

しかし、それを誰が船に持ち込んだかはわかりません。すでに感染していた人が横浜からクルーズ船に乗船したのかもしれません。感染しても自覚症状が出るまでの時間差が大きいからです。

GISAIDの新型コロナウイルスの系統樹から、クルーズ船に近い部分を抜き出してみた(作図:山根一眞) 拡大画像表示

山根 中国が感染開始時から情報をすべて公開していれば、クルーズ船も安全策をとることができたのでは?