映画ライターである筆者は、ポン・ジュノ監督作『パラサイト』が公開される数年前より、欧米の映画のセールス・エージェントたちから「韓国映画を売りたい」という話をよく聞いていた。

今年の第92回アカデミー賞で、作品賞、監督賞を含む4部門を受賞した『パラサイト』〔PHOTO〕Getty Images

なぜ海外のセールス・エージェントは日本映画より韓国映画を売りたいのか。世界中の映画祭やフィルムマーケットを飛び回り、しのぎを削りあいながら映画を売る彼らに、韓国映画の魅力と『パラサイト』の成功要因、そして日本映画が世界に進出するうえで”足りないもの”について聞いた。

日本にはいないセールス・エージェントの存在

日本ではセールス・エージェントの役割を担うのは配給会社の海外セールス部門だが、欧米や韓国では、国際セールスに特化したセールス・エージェントがいる。彼らは作品を各国の配給会社、TVネットワーク、ストリーミングプラットフォーム、飛行機会社、ホテルチェーンなどなど、映画が上映されるあらゆる場所に売る。世界中の映画祭に併設されたフィルムマーケットに飛び、作品を最高値で売るのが彼らの使命だ。

作品の付加価値を上げるために、カンヌ、ベネチア、トロントなど大きな映画祭のプログラマーに作品を紹介し、コンペティション部門に上映してもらうように務めるのも彼らの仕事。映画祭のプログラマー(主催者)も、無名監督や特定の地域やジャンルの映画にも詳しいセールス・エージェントの情報を重宝しているという。

まず話を聞いたのは、フランスのセールス・エージェント。彼は売れそうな企画を見つけるために毎日脚本を2本読み、年に25回以上も海外へ出張、映画の企画からポスト・プロダクション(制作後の作業)まで関わっていると言っていた。脚本制作の早い段階から映画の売上を予測し、国際セールスにまつわるあらゆる交渉のスキルを磨き上げたプロ集団がセールス・エージェントであり、フィルム・メーカーが世界市場で自分の作品を売るためには必要不可欠な存在なのだ。