観光客激減「震災並みの大打撃」で露呈した日本のインバウンドの弱点

新型コロナとクルーズ・ビジネスの死角
中村 正人 プロフィール

関係者はその理由として、世界各国の船会社が急成長した東シナ海クルーズ市場に多くの船を投入したせいで、集客が追いつかない受給のギャップが起きたと指摘する。

だが、理由はそれだけではなさそうだ。欧米のクルーズ市場で高いリピーター率が見られるのに対し、中国発の場合、リピーターが少ないことが指摘されていたからだ。上陸後はバスで観光地と免税店を回るだけで、クルーズ客の満足度を高めるひとつの指標とされる、寄港地の市民との交流はほとんどなかったからである。

すでに市場は調整期に入っていたのだ。国土交通省が「訪日クルーズ旅客数は前年比12.2%減の215.3万人、我が国港湾へのクルーズ船の総寄港回数は前年比2.2%減の2867回」(令和2年1月23日速報値)と集計しているとおりである。

「客数を追う」姿勢を再考すべき

話を戻そう。これまで述べた中国発クルーズ客船の裏事情は、ダイヤモンド・プリンセスのような日本発着クルーズとはひとまず別物といっていい。

だが、今回感染源となったのが「フライ&クルーズ」客だったことは、風評被害を考えると船会社にとってキツイ話である。すでに多くの国々がそうだが、世界の船会社が「上陸日からさかのぼって14日以内に中国本土の渡航歴のある人は、国籍を問わず乗船できない」というガイドラインをいち早く発表したのはそのためだ。

今回のクルーズ客船による新型コロナウイルス感染問題が、日本のみならず、世界のクルーズ市場に大打撃を与えることは言うまでもない。

この10年間、急激な勢いで拡大した東シナ海クルーズ市場を支えたのは、「動くリゾートホテル」といわれる豪華客船のインフラ・サービスを用意したクルーズ会社と、寄港地としての場を提供した日本側の施策である。

 

それ自体は非難されるべきものではない。しかし顧客の仕切りや運営を中国側に任せたことで、クルーズ客は中国の業者に囲われ、寄港地の市民との接点のない上陸観光がまかり通ることになってしまった。