観光客激減「震災並みの大打撃」で露呈した日本のインバウンドの弱点

新型コロナとクルーズ・ビジネスの死角
中村 正人 プロフィール

クルーズ客船の航行ルートもそうだ。「初春の東南アジア大航海16日間」と銘打たれた横浜発着のクルーズ旅行は、1月20日に横浜を出港。22日鹿児島、25日香港、27日、28日ベトナム、31日台湾、2月1日那覇と、東シナ海を周遊して4日に横浜に帰港するはずだった。

ところが、1月20日に横浜から乗船し、25日に香港で下船した80歳の香港男性が新型コロナウイルスによる肺炎と判明したため、1日早い3日に帰港。同男性の移動経路として、1月10日香港から中国本土へ入った後、17日に飛行機で日本に来て、20日に同船に乗ったこともわかった。

クルーズ旅行にはふたつのスタイルがある。日本の港を出航し、同じ港に戻る「日本発着」と、海外の都市に飛行機で行き、その港からクルーズ客船に乗る「フライ&クルーズ」で、香港男性のケースは後者に当たる。ダイヤモンド・プリンセスに多国籍の乗客がいたのも、各国の寄港地で乗船していためだ。

Photo by gettyimages

「安いクルーズ」が市場を盛り上げた

実をいえば、日本のクルーズ旅行は長らく盛り上がりを欠いていた。海に囲まれた島国なのに、欧米先進国に比べて日本のクルーズ人口が著しく少なく、その理由として「費用が高く、期間が長い」ことが市場拡大の足かせと言われていた。クルーズ旅行は「ゴージャスで手の届かないもの」という思い込みに多くの日本人は縛られていたのだ。

ところが、2010年代半ばから変化の兆しが見え始めた。国土交通省によると、日本人のクルーズ乗客数は2016年に前年度比12.4%増、17年に同27.1%増、18年は伸びこそ鈍化したものの同1.8%増で32万1000人と過去最高になったのである。

 

背景には、外資系クルーズ会社による最新鋭のエンターテインメント施設を備えたアミューズメントパークのような大型客船の日本発着が増えたことがある。しかも、必ずしも高額ではないカジュアルクルーズとしての登場だった。それにともない、日本のクルーズ人口も少しずつ増えていった。