# ジェンダー

男性は「見えない特権」と「隠れた息苦しさ」の中で、どう生きるか

自己を問い直す対話を開く
西井 開 プロフィール

「司令官」について読んだとき、グループ内で語られたエピソードで思い当たるものがいくつかあった。自身の苦悩がいつ上昇し、いつ和らいだかを図に表し、参加者同士で発表し合ったときのことである。メンバーの一人が、特に何か傷つく出来事があったわけではないのに、ひとりでに苦しくなる時期が続いたと話した。

「大学院に入ってから、同年代の人はそれなりに恋愛経験積んでるのに自分は全く積めてない。研究もまともに出来てないし、ちゃんと働く見込みも立たないし、人間関係も全然うまくいかない。このような格差、格差を感じるようになってきて、それで自意識をどんどんこじらせていったんです。自分の居場所はこの世にないんじゃないか、だから人と関わってても寂しい、孤独を感じるというか。そう、人と会ってても、寂しい。人と会ってても孤独っていう感じでした」

彼は、恋愛経験を積み、きちんと働き、社交的でなければならないという司令官の命令に従えないことによって、周囲の男性と比べて自分は劣った存在だと強く認識させられていた。

また別のメンバーは女性との関わりについて考えるワークで、女性と食事に行ったときのエピソードを紹介してくれた。会計の際、相手の女性が「自分の分は自分で払う」と言っているにもかかわらず、それを制して無理に全額おごったという。初めての食事に緊張した彼は、会計をどうしていいか分からずに焦り、深く考えることなく「男性が女性に奢るべき」という社会通念に従った。「もうそれ以外のことが考えられなくなってましたね」。

〔PHOTO〕iStock
 

この関わりは、相手の女性を一段下にいる存在として位置づけるものであり、男女間の不平等な構造を無意識のうちに維持してしまっている。彼は女性の優位に立たなければならないという司令官の指示に従ったわけだが、その後彼女からの連絡は来なくなったという。彼は「相手も来たいという主体的な思いを持って一緒に食事をしたのに、その気持ちを考えてませんでした」と振り返っていた。