# ジェンダー

男性は「見えない特権」と「隠れた息苦しさ」の中で、どう生きるか

自己を問い直す対話を開く
西井 開 プロフィール

さらに始末が悪いことに、男性同士の競争は、直接的な攻撃として表出されることもある。私自身の経験やグループでの経験談に照らしても、そうした傾向は如実にある。グループ内で、背が低い、運動ができない、色が白い、恋人がいないなど、あらゆる理由で周囲からからかわれたというエピソードが語られることは多い。

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そしてグループのメンバーたちの多くが、「(競争に勝つ)条件を満たしていない自分が悪い」という自己否定感を抱き、例えば筋トレをすることで筋肉を増やすこと、学歴の高い大学へ入ること、そして一刻も早くパートナーをつくることに焦るようになったと話している。デフォルトマンの作った価値基準は疑われることはなく、むしろ再生産されていくのである。

またペリーによると、この競争関係は男性の「感情の麻痺」と密接な関係がある。理性的であれという規範に則った男性は、怒りや喜びや楽しさといった感情を抱きにくくなるだけでなく、感情を抱いていることに気付かなくなる(p.159)。

安心感のある場で自分の気持ちを語り、受け止められるという機会から疎外された男性たちはお互いの間でまたヒエラルキーをつくり、他者より優位に立つことで自尊心を満たすようになる。その結果、自分の困惑や望みや、個人的なことをさらに言えなくなってしまうのだという。

司令官の命令

こうした競争的な傾向や、自分で自分をおいつめるようなふるまいについて、ペリーはそれが男性の頭の中にいる「司令官」の無意識的な命令によるものだと書いている(p.20)。司令官とは男性の中に内面化された、あるいは社会全体に蔓延する男性規範を擬人化したものだ。

 

司令官は男性の特権を維持したがっていて、さまざまなソース(両親、教師、友人、映画、テレビ、書籍)を基にして男性たちに指示を与える。司令官は、完璧な男性モデルを組み立て、それを目標にして生きることを繰り返し要請するのである。指揮下にいる男性たちは何かにしくじると、自分に価値がないと感じ、自己嫌悪に陥ったり不満を他人に向けたりするのである。