©Dongchun Films Production

中国1人っ子政策「史上最大の人口削減事業」が残した過酷な爪痕

社会と家族から未来と温もりが奪われた

「その」歴史に生きた家族の映画

4月3日から東京を皮切りに全国で順次ロードショー公開される中国映画『在りし日の歌』(原題「地久天長」、英題“SO LONG, MY SON”)は上映時間185分の長編である。同映画は2019年3月に開催された第69回ベルリン国際映画祭で、主演の王景春(ワン・ジンチュン)と詠梅(ヨン・メイ)が、それぞれ最優秀男優賞と最優秀女優賞を受賞した「ダブル受賞作品」である。

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『在りし日の歌』という邦題は詩人の中原中也の詩集と同名だが、映画は中也の抒情詩とは正反対の叙事詩であり、中国で2組の家族が1980年代初期から2011年までの約30年間を心に葛藤を抱いてもだえながら生きた歴史絵巻である。なお、原題の「地久天長」は2組の家族の間で友情が永久(とこしえ)に変わらぬことを表すと同時に、人間の営みが永遠に続いて行くことを意味している。

中国北方の内陸部にある国有企業で働く、仲の良い2組の夫婦(劉耀軍と王麗雲、沈英明と李海燕)は1980年代初期の同月同日に共に男の子を授かった。男の子はそれぞれ劉星、沈浩と名付けられ、一生助け合うようにと2人に義兄弟の契りを結ばせた。

その後、王麗雲は2人目の子供を身籠るが、1980年頃から始まった「独生子女政策(1人っ子政策)」によってお腹の子供は強制的に堕胎させられた上に、手術の失敗で2度と妊娠できない体になってしまう。これに追い打ちをかけるように不幸が襲い、彼ら夫婦は大事な1人息子の劉星を水難事故で亡くしてしまう。

 

2度と子供を産めない夫婦は悲しみを忘れようと故郷を遠く離れた南方にある海辺の町へ移住して新しい生活を始めた。夫婦は男の子を養子に迎え、死んだ劉星の身代わりとして育てるが、身代わりであることに不満を抱く養子の息子は夫婦に反発してぐれてしまい、ついには家を出て行ってしまうのであった。

一方、沈英明と李海燕の息子である沈浩は、自分が泳げない劉星を無理やり泳ぎに誘った挙句、彼を水死させたという自責の念にさいなまれつつ成人し、いつの日にか、その真相を亡き劉星の両親である劉輝軍と王麗雲に告白しようと決意するのだった。