本や映画には、SDGsのさまざまな問題を知り、楽しく読み観て考えるための、多くのヒントがあります。それぞれにとって学びとなった大切な一冊一作を、お笑い芸人、ライターなど5人に聞きました。

経験したことのない未来へと歩む
子どもたちに捧げたいもの

バービー お笑い芸人

国際協力NGOのワールド・ビジョン・ジャパンを通して、タンザニアの男の子とインドの女の子をチャイルド・スポンサーとして支援していることもあり、貧困や教育の問題には人一倍敏感に反応してしまいます。『10年後、君に仕事はあるのか?』は、人生100年時代の長寿社会に突入し、生涯現役で働いていかなければならない今の若い世代に問いかける一冊。

終身雇用の崩壊やAIの台頭など、経験したことのない未知の世界へ放り出される若者へ向けたサバイバルのヒントは、すでに社会人として歩み出している私たちにとっても得るものが大きい。読み終えて、思い浮かべたのは地元の夕張に住む甥っ子たちの顔。まだまだ保守的な考えが一般的な田舎の子どもにも、こういった先駆的な見解をいち早く知って欲しい。きっと未来への選択肢が増えるし迷った時の救いになるから。

タイトルからちょっとエッチな内容を想像した映画『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』は、プロテニスの世界を題材に真正面からウーマン・リブを描いた作品でビックリ。性別を超えた勝負をすることで、女性選手が賞金や立場の向上を獲得しようとする物語は、真剣なテーマを扱いながら、随所に笑いどころがあってエンターテイメントとして昇華しているのが素晴らしい。男性選手の口の悪さは今なら炎上確実。それを一見クールに受け止め、記者会見の場を成立させる主人公ビリーの胆力に惚れ惚れする。

10年後、君に仕事はあるのか?
藤原和博/著 テクノロジーの進歩によって激変する社会のなか、親の後ろ姿を見ても参考にできるものが少ない今の若い世代に、どうやって自分の価値を確立し、生涯をかけていかに稼いでいくかを手引きする。ダイヤモンド社/¥1400

バトル・オブ・ザ・セクシーズ
実話を基に1973年に行われたテニスの男女戦を描く。賞金の低さに業を煮やし自ら女性選手の協会を設立した主人公に、男性選手から挑戦状が叩きつけられる。歴史的一戦の行方は? 20世紀フォックス/¥1905(BD)

バービー
1984年生まれ。2007年に相方のハジメとフォーリンラブ結成。テレビを中心に多くのメディアで活躍しながら、近年はランジェリーのプロデュースに乗り出すなど多才な面を見せる。また、地元の北海道夕張市では町おこしにも関わる。

権力的な社会、破壊される環境を、
阻止するために訴え続ける

武田砂鉄 フリーライター

ピンク・フロイドに在籍していた頃から反権力的な主張を繰り返すロジャー・ウォーターズ。とりわけトランプ政権以降は直接的にメッセージを出しています。ライブ・フィルム『Roger Waters Us+Them』では、ブタのバルーンにトランプのイラストを表示し、若者たちをステージに上げて「抵抗せよ」と叫び、「私たちは皆、我々(Us+Them)なんだ」という言葉とともに移民が逃げてくる映像を流す。世界が分断され、独裁者が暴走する社会で、岐路に立たされた私たちに何をすべきかを問いかけています。日本の音楽シーンには、なかなかそういうことを訴える人はいませんが、キャリアの晩年を迎えたミュージシャンたちがそういった意識を強く持っているのは希望です。

また、『で、オリンピックやめませんか?』には、オリンピックに反対するさまざまな理由が書かれています。問題はいくつもありますが、その一つが復興五輪を掲げた木と緑のスタジアム。エントランスの軒に被災4県の木材を使う、その事実を象徴的に打ち出す反面で、マレーシアなどの熱帯雨林を伐採した木を大量に使っていることはなかなか届いてこない。環境に優しいと装いながら、明治公園を潰して建っている。今、環境に関する問題の観点からも、開催地に立候補する都市は減ってきています。オリンピックを招致することでどういうことが起きるのか、もう少し考えなければならないのではないかと思います。

Roger Waters Us + Them
2017年からのロジャー・ウォーターズのワールドツアー映像。最先端の技術、贅を尽くしたステージから、人権、自由、愛を訴える。日本では一夜限定で上映、リリース情報は、www.sonymusic.co.jp/artist/RogerWaters

で、オリンピックやめませんか?
天野恵一・鵜飼哲/編 編者を含む13人の書き手がそれぞれの立場から、オリンピックに反対する理由を綴った提言集。巻末には、開催費用、過重労働、野宿者の排除など、18の反対理由が分かりやすくまとめられている。亜紀書房/¥1600

武田砂鉄 たけだ・さてつ
1982年生まれ。出版社勤務を経て、フリーライターに。著書に『日本の気配』『紋切型社会』など。文化放送『大竹まこと ゴールデンラジオ』(隔週火曜)、TBSラジオ『ACTION』(毎週金曜)に出演中。雑誌、ウェブでの連載も多数。