妻を亡くし、広すぎる我が家を売って「寝たきり」になった男性の後悔

最後まで自宅を売ってはいけない
週刊現代 プロフィール

由紀子さんはマンションの住民と顔を合わせるのを避けるようになった。夫の入居する施設への足も遠のき、完全な引き籠もり状態に。そうなると体力もあっという間に衰えてしまう。

その結果、由紀子さんはマンションのリビングで転倒し、大腿骨を骨折。自力で救急車を呼んだものの、現在でも車椅子生活を強いられている。一歩間違えれば、誰にも知られずに死んでいたのだ。

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現在、孤独死する人の数は年間3万人。東京福祉保健局の調査では、都内23区だけで一日あたり8.5人もの65歳以上の高齢者がひとりぼっちで亡くなっている。

ノンフィクション作家で『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』の著者・菅野久美子氏は、こう語る。

「私が見てきたなかでも悲惨だったのが、奥様との死別を機にひとり暮らしを始めた70代男性の事例です。その方は新たな住環境がストレスになり、生活へのやる気を完全に失ってしまいました。

死後1ヵ月で発見された時点では、部屋はまるでゴミ屋敷のような状態でした。引っ越しの荷ほどきも終わっておらず、段ボールは山積み。

 

浴室内にもゴミ袋が積み上がり、床には蛆が這いまわっていました。60歳を越えてからの引っ越しは、それほどにリスクがある決断なんです」

何十年も住んできた家や土地を売って引っ越すことは、その人の築いてきたすべてを変えてしまう。快適さや便利さを重視したばかりに、取り返しのつかない悲劇を招いてしまうのだ。

『週刊現代』2020年2月22・29日号より