脱毛を理由に抗がん剤拒否で、後悔するケースも

しかし、もしも自分が使う抗がん剤に、“脱毛”という副作用が出ると言われたら……。「近所や職場、学校の友達にがんであることを知られたくない」「人と接する職業なので仕事に差しさわる」「脱毛自体が耐えられない」などさまざまな理由で、私のように二の足を踏む人は多いだろう。

「そもそも抗がん剤をやりたい患者さんはいませんし、脱毛する治療を躊躇されるのは当たり前です。ただ、以前の記事でも説明しましたが、初発(初めてのがん)の抗がん剤は再発を防ぐことで、完治を目指すための治療です。とくに乳がんで抗がん剤が効くタイプの方はしっかりやっておいた方がいいですね。“たとえ脱毛があるとしても、がんを治すために今しかできない、価値のある治療です”、と、何度も何度も説明します。

なかには、再発リスクが高い患者さんに、“抗がん剤をやるかやらないか自分で決めて”“脱毛するのが嫌ならやらなくてもよい”と選択を患者さんに預けてしまう医師もいます。そう言われれば“やらなくてよいならやめておこう”と患者さんは思ってしまうかもしれません。

でも、そういった方が再発後“苦しくても脱毛してもいいから、どんな治療でも受けたい”と私の病院を受診されることも少なくありません。でも、そこからの根治は非常に難しい。脱毛を理由に術後の治療で抗がん剤を省いてはいけませんし、医療者は何の目的でやるのかをしっかり説明する必要があります」(勝俣医師)

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私が抗がん剤をやるか悩んでいたとき、同じ病室だった肺転移治療中の乳がんの先輩が私に、「お願いだからやって」と抗がん剤を強く勧めた。その後、彼女が亡くなったという知らせを受けたとき、彼女が私を説得したかった理由にやっと気づいた。がんは命に係わる病気で、逃げている場合ではないのだと、腹が座った。実際には脱毛だけが理由で抗がん剤をやらない選択をする人は少ないと思う。ただ、一度は心が拒んだとしても、命が最優先ということを忘れてはいけない

抗がん剤は通院が多いため、ウィッグ着用で治療を受けるシーンもドラマでは描かれる。写真/フジテレビ