新型コロナショックで大荒れの株式市場、これからどう動く?

ウラで進行するもう一つの脅威とは
小出 フィッシャー 美奈 プロフィール

米国の科学ジャーナリストのチャールズ・マンという人が書いた『1491』と『1493』(1492年のコロンブスによる新大陸「発見」の前と後)という、とても面白いノンフィクションがある。近年の考古学研究などを丁寧に解説し、ヨーロッパ人到来前のアメリカ大陸の人口が、従来推定されていた900万人程度よりはるかに大きく、1億人以上だった可能性もあることを指摘している。

何が起きたのか? 研究者らの意見が一致しているのは、わずか168人の兵力と68頭の馬しか持たなかったピサロが、中国の明朝やオットーマン帝国より広大だったペルーのインカ帝国を征服できたのも、2500万人の首都人口を抱えたメキシコのアステカ帝国が崩壊したのも、スペインの軍事侵攻より疫病のダメージの方が圧倒的だったことだ。

インカ帝国を征服するピサロ/Photo by Gettyimages

ヨーロッパ人が持ち込んだ疫病で亡くなった原住民の数がどれくらいだったかについては議論があるが、その推定は近年上方修正されつつあり、実に人口の「95%」に上った可能性もあるという。

さらに、疫病が人間の近くにいる動物から発生した点でも、史実は示唆に富む。

新型コロナウィルスやSARSは、遺伝子配列の分析からコウモリが発生源となった可能性が高いとされるが、新大陸の原住民に壊滅的な打撃を与えた天然痘は、もともと西アフリカのラクダのウィルスから来たもので、アメリカ大陸には存在しなかった。

さらに新大陸では、スペイン人が持ち込んだ豚によっても疫病が大流行した。豚や牛などの家畜と近いところで暮らすのに馴染んでいるヨーロッパ人には免疫があったが、インディオは七面鳥など一部の例外を除いて家畜を買う習慣がなかったので、ウィルスに対する抵抗力がなかったのだ。

 

以来、パンデミックの発生は、グローバル化する経済システムに大きなジレンマを投げかける。我々は国際的なトレードのお陰で選択肢豊かな生活を送ることができる。コロンブスが新大陸を「発見」していなければ、イタリア料理からトマトソースが、四川料理やキムチ、インドカレーから唐辛子が、ドイツ料理からジャガイモが消え、世界の食卓は寂しいものになっていただろう(トマト、唐辛子、ジャガイモは、いずれもアメリカ大陸原産)。

一方では人やモノの交流が活発になったことで、一地域で発生した感染症が瞬く間に世界を駆け巡るようになってしまった。今やSARSの時代と比べても、世界の経済的な結びつきは中国の経済大国化によって格段に強まっている。同時に様々な感染症が株式市場を恐怖に落し入れる頻度も高まりつつあるようだ。