早期退職後も「年収700万円を死守したい」50代会社員の「甘さ」

「やりたいことがない」会社員の末路
前川 孝雄 プロフィール

私はAさんの実務能力までは正確に把握していたわけではないが、彼がなぜ早期退職勧奨の対象になってしまったのか、その理由の一端をこのちょっとしたやりとりから理解できたように思う。

キャリア自律を求めるのは転職を志望する次の企業にしても同様だ。面接で自分のやりたいことすら満足に語れない人を積極的に採りたいという企業は、人材不足の中小企業であってもそう多くはないだろう。私は、Aさんが今辞めるのは危険だと感じた。

転職の条件が「年収」だけじゃ通用しない

それでも、「では、転職するにあたり、大切にしたい条件はあるのですか?」と質問を重ねると、Aさんはこう口にした。

「はい。現在年収800万円ほどですので、同額は難しいとしても、せめて100万円ダウンまでの700万円までで転職したいのです。住宅ローンも残っており、子どもも大学受験ということもあり、妻からのプレッシャーが強いのです」

Aさんが転職の条件にあげたのはたった一つ、給料についてだけだった。もちろん、住宅ローンや子どもの教育費のことを考えればその気持ちはよくわかる。しかし、考えてもみてほしい。あなたが転職者の採用を検討している企業の経営者や人事だとして、転職後やりたい仕事をまったく語らないのに、給料だけはいくらほしいと主張する中高年の応募者を採用するだろうか。

 

ただでさえ、中小企業経営者のなかには「大企業出身者は上から目線で会社の問題を指摘する割に、高い給与ぶんの働きをしてくれない」と敬遠されることも多いのが現実なのである。