「男と女…あやつりつられ」梅沢富美男が語る大ヒット曲『夢芝居』秘話

梅沢富美男×小椋佳×太田省一
週刊現代 プロフィール

小椋 とはいえ、最初は全く気が向かなかったことも事実です。ですが、伊藤さんから「まずは梅沢さんの舞台を見てほしい」と言われて、十条の演芸場に行ったことで気持ちが変わりましたね。

演技の巧みさもさることながら、アドリブの効いたセリフで会場を沸かせる話術。役者として、エンターテイナーとして、凄まじい才能を持ったこの人のためなら曲を作ってもいいな、と思えた。

太田 梅沢さんの無理難題から、まさかの組み合わせが実現してしまったわけですか。なんだか運命すら感じてしまいます。

 

小椋 当時、僕はまだ銀行員だったので、作曲できるのは土日だけだった。ある日曜日、ゴルフをする予定だったのですが、大雨で急に中止になった。その日、「せっかくだから今日は2曲作ろう」と決心しました。

まず午前中に、NHKで初代歌のお姉さんを務めた眞理ヨシコさんの『お昼寝と虹色のハンカチ』が完成しました。丹念に作った甲斐あって、我ながら傑作だと思いましたね。

それで、午後には梅沢さんの曲に取り掛かったんですが、先に完成した曲の出来があまりに良く、横着してしまいまして……。実は、『夢芝居』は午前中にできた曲をマイナー調に変えただけなんです。

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太田 ええっ……。小椋さんに関する資料はかなり読ませていただいたつもりでしたが、そんな事実初めて知りました。

梅沢 もっと魂込めて作ってくださいよ(笑)。

小椋 いい加減に作った曲がヒットしちゃって、自分でもびっくりしました。だけど、ヒット曲ってそんなものですよ。布施明さんに提供した『シクラメンのかほり』だって全く狙っていません。肩の力を抜いて作った曲ほど売れることも多い。