映画『パラサイト』よりⓒ 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

「パラサイトフィーバー」の裏に隠された、韓国人の微妙な「本音」

大ヒット映画への便乗は貧困ポルノか?
カンヌ国際映画祭でのパルム・ドール(最高賞)に続いて、米アカデミー賞でも外国語映画初の「作品賞」受賞という偉業を果たした韓国映画『パラサイト 半地下の家族 』。
自国文化の世界的な成功に沸く韓国だが、その一方で、『パラサイト』が描き出した韓国社会の問題をめぐっては、一筋縄ではいかない微妙な「本音」もあるという。『韓国 行き過ぎた資本主義』の著者・金敬哲氏が解説する。

文在寅大統領も頼る「パラサイトマーケティング」

作品賞をはじめ、主要4部門でアカデミー賞を受賞した「パラサイト」の成功は、韓国社会に大きな喜びをもたらした。日本はもちろん、これまでアジアのどの国も成し遂げられなかった今回の快挙を、韓国が誇る「Kコンテンツ」の底力を世界に示した“事件”とみなす向きもある。「映画界のノーベル賞を取った」などの表現が登場したほどだ。

オスカーを手にしたポン・ジュノ監督(photo by gettyimages)

「パラサイトフィーバー」は、総選挙を控えた韓国政界にも波及している。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、ポン・ジュノ監督らパラサイトチームを大統領府の昼食に招待し、映画に登場する人気メニュー「チャパグリ」でもてなした。この席で、文大統領は、「映画が見せてくれた社会意識に深く共感する」「不平等の解消を国政の最大の目標としているが、反対も多く、なかなか成果が現れず焦れったい思いをしている」と、自分の経済政策をアピールした。

 

総選挙に出馬する候補の間でも「パラサイトマーケティング」が人気を集めている。ポン監督の故郷である大邱(テグ)地域の候補者らは「ポン監督の生家保全」「ポン・ジュノ博物館建設」「ポン・ジュノタウン造成」などを公約に掲げる。与党の「共に民主党」は、第2のポン・ジュノを育成するとし、多彩な文化産業育成政策を党の公約とした。

熱狂の裏に隠れた韓国人の意外な「本音」

しかし、 喝采の裏には韓国人の意外な「本音」も存在する。先日、ある集いでパラサイトが話題に上ると、こんな話を聞かされた。

「嬉しいけど、正直ちょっと恥ずかしいわ。韓国の良くない部分ばかり浮き彫りにされた感じ。私は半地下の部屋なんて見たこともないのに、映画のせいで韓国人の多くは地下に住んでいるって思われたらいやだわ」

電波の弱い半地下部屋で暮らす兄妹(『パラサイト』より)
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「私は半地下部屋を訪ねたことがある。しかし、暗いことを除いては、映画のように悲惨には見えなかった。それより最近、ソウルで消毒スプレーを撒くの見たことある? 映画に出てくる韓国の貧困はとても誇張されていると思う

「結局、映画は上流0.1%と下流0.1%の話よ。韓国社会全体の問題じゃないと思う。我が国は裕福になったし、とても暮らしやすい国だわ」

この集いはキリスト教の信者たちの親睦会で、参加者のほとんどは韓国の中産階級の主婦たちだ。この日は私を入れて6人が参加したが、なんと4人がパラサイトについて、「見ていてあまり心地よくなかった」と胸の内を語った。