新型コロナに苦しむ韓国で「左派の文在寅叩き」が加速…急先鋒の素顔

韓国政界が恐れる「デスノート」の使い手
牧野 愛博 プロフィール

なぜ、それほど一介の元大学教授の発言に重みがあるのか。それは、陳重権氏が「進歩のなかの進歩」と呼ばれる人物だからだ。

陳氏は2013年、正義党(当時は進歩正義党)の結党にかかわった中心人物だった。正義党は労働組合などを基盤に持ち、韓国型社会民主主義の実現を訴える韓国の「最左派」とも言うべき政党だ。文在寅政権の母体である「共に民主党」よりも、対日路線や労働問題では過激な主張をすることで知られる。

陳氏は正義党結党などに関わるなか、進歩勢力の人々と親交を深めていった。2012年からは、東洋大学の教授も務めた。ここでは、昨年10月に長女の大学院不正入学にからんで逮捕された曺国氏の妻、チョン・ギョンシム被告も働いていた。

陳氏は曺国夫妻とも親しく、過去には検察改革を訴えた曺国氏を応援してもいた。陳氏は進歩陣営の重要人物たちと親交を重ねるなか、彼らの実態をよく知るようになっていった。韓国政府の元高官は陳氏の発言について「進歩陣営の表も裏も知り尽くした人物。だから、発言も微に入り細に入りで、説得力がある」と語る。

 

「文在寅は保守主義者と同じ」

そして、陳氏は今の文在寅政権を「ニセの進歩だ」と切り捨てている。2月18日には、テレビ番組で「(進歩陣営の)彼らは変質した。保守主義者と同じように行動している。質の悪い保守主義者とも言える」とこき下ろした。

陳氏が文在寅政権を批判するようになった契機は、曺国前法相を巡る疑惑だった。親交のあった曺夫妻から噴き出した疑惑に反発。そして自らが所属していた正義党が、曺氏の法相就任に反対しなかったことを批判し、同党を離党した。

さらに、東洋大教授の職まで投げ出した。曺氏とチョン被告の長女が大学院入学の際、履歴書に「東洋大総長賞の表彰を受けた」と記載したが、総長は検察に対して「表彰した事実はない」と証言して、対立したからだ。