専門家を軽視し、不安を利用する日本の政治…新型コロナが示したこと

「不安の政治化」とは何か
日比 嘉高 プロフィール

一斉休校は支持率低下を受けた安倍首相の苦し紛れの策だという解説ニュースを読み、実際政局的にはかなりの悪手だったと私も見ているが、政局などは短期的な問題に過ぎない。より長期的に問題なのは「非常事態」に私たちが慣らされていくことである。

そしてさらに押し進めて言えば、「非常事態」において強い強制力を発揮する権力を、我々自身が求めるようになってしまうことである。実際、今でも政府に「自粛の基準を決めてくれ」と求める声が聞こえるし、「決められた以上はやるしかない」とあきらめ受け入れる声が聞こえるのである。

〔PHOTO〕Gettyimages

カミュは『ペスト』でこう書いている。

「だが、ペストや戦争がやってくるとき人々はいつも無用意な状態にあった。」

カミュの生きた20世紀にはそう言えたかもしれない。しかし21世紀の政治で、ペストや戦争は向こうからやってこない。現代のペストや戦争は、人々の不安が、自ら社会のうちに招き寄せるのである。

 

不安は、人々の非理性的な思考や行動を誘発する。実際には払底しないトイレットペーパーの買い占め程度であれば笑い話で済むが、感染への恐怖は「感染者」もしくは潜在的可能性をも含めた「感染源」への深刻な忌避や差別を生むことがある。日本の国内でも国外でも、中国人やアジア系の人々──海外ではここに日本人も含まれる──に対する差別の言動が見られる。