〔PHOTO〕Gettyimages

専門家を軽視し、不安を利用する日本の政治…新型コロナが示したこと

「不安の政治化」とは何か

突然の発表

カミュの『ペスト』が売れている。文庫版の版元である新潮社は、急遽4000部の増刷を決めたという。ペストの感染拡大によって封鎖されたアルジェリアの都市オランを舞台に、医師とその仲間たちが閉鎖環境の中で苦闘するというノーベル賞作家のこの小説が、新型コロナウイルスの感染拡大におびえる人々の不安と共振しているのだろう。

広がり続ける感染という現実を前に、私たちは抑えようのない不安にさらされている。専門家の知見は、市民の不安に応えられるのか。そして政治は、社会に広がる不安に対しどのように対処しようとしているのか。

2月27日の夕刻、安倍総理大臣が全国の小中高等学校などに対して、春休みまで臨時休校とするよう要請する方針だというニュースが流れた。方針の決定過程を検証した記事によれば、安倍晋三首相は今井尚哉首相補佐官らの提案を受け、菅義偉官房長官にも相談することなく、萩生田光一文科相と文部科学省担当者の反対をも押し切って、これを決めたという。

〔PHOTO〕Gettyimages
 

この判断のプロセスには疑問が残る。しかしいっそう問題なのは、首相の決断が、〈新型コロナウイルスの拡大を押さえ込むためには一斉休校が有効だ〉というような専門家の提言に基づいてはいなかったという事実である。驚くべきことに、安倍首相は、確たる根拠もなく47都道府県すべての小中高などに対し、休校を要請していたのである。