ライターの長谷川あやさんは、旅や舞台のルポも多く手掛けており、趣味で海外の舞台も多く観るため、1ヵ月に15フライトもしたことがあるほどだ。2月28日からも、長谷川さんはベトナムの出張に行く予定だった。しかし結果として飛行機に乗ることができなかった。2月29日の午前中には、ベトナム大使館が「韓国からの入国者に対し、14日間、特定施設などで隔離する」と発表したと報じられたが、長谷川さんが体験したのは、その報道が出る前日のことだった。

つまり、新型コロナウイルスによる混乱の最中、事情は瞬時に代わり、同様のことも様々な場で起こるかもしれないのだ。それが「現実」なのだ。長谷川さんに実体験を寄せていただいた。

空港に行く無駄足を踏まずにすむように

「搭乗拒否」という憂き目に初めてあった。確かに、今は新型コロナウイルス感染拡大の混乱の中にあり、世界中が慎重になるのは当然だ。ただ、私が搭乗できなかったことはあとから考えてみると不思議な気がするし、悲しい。できるだけ愚痴っぽくならないように(でも多少は漏れ出すだろう)、初めての「搭乗拒否」の顛末をお伝えしたい。そして、世界的に未曽有の出来事が起きている証拠の一例として、是非最後までお付き合いいただければ幸いだ。日々状況が変わるという事情を理解した上で、ほかの方が、空港に行く無駄足を踏まずにすむように。

私は2月14日(金)から17日(月)まで韓国・ソウルに旅行に行った。仕事ではなく、ヲタ活だ。その頃はまだ大邱での集団感染が明らかになる前で、感染者数は日本よりも少なかった。私はむしろ感染者の多い日本から来たことに恐縮していた(が、イヤな思いは一度もしていない)。また、ひどい花粉症であること以外は健康そのものという自覚があるにせよ、ウイルスをばらまくことも、もらうこともしないようにと、マスク、手洗いは欠かさないよう心血を注いだ。

まだ感染が拡大する前から、屋外に注意喚起の看板や掲示があった(2月16日にソウルで撮影) 撮影/長谷川あや
韓国でも「中国人お断り」の張り紙が…それが自分たちにブーメランになっていく 撮影/長谷川あや

そして、2月28日(金)、この日からベトナム・ダナンに出張の予定だった。仕事とはいえ、つかの間、花粉から逃れることのできる5日間の滞在を私は楽しみにしていた。

ベトナムは、新型コロナウイルス感染症に際し、一歩踏み込んだ対策で、外国人の管理強化を徹底している国のひとつと認識している。入国拒否は気になっていたが、10日以上前に、韓国・ソウルにいたことはもう記憶の彼方。そんなことよりも、日本に住む日本人であることについての入国拒否を懸念していたので、ベトナム入国に関する情報はこまめにチェックしていた。少し不安は感じていたが当日28日の1時16分、外務省のホームぺージに下記の記載があり、私は胸をなでおろし、10時発のベトナム航空319便成田発ダナン行きに乗るために成田空港に向かった。

長くなるが引用する。

2月26日,ベトナム外務省は,韓国からの全ての入国者に対する医療申告の実施,同国南東部・大邱市及び慶尚北道から渡航する外国人の入国制限等について,要旨以下のとおり発表しました。
なお,27日現在,日本人や日本からの渡航者が入国制限措置等の対象になるとの情報には接していません。

(1)韓国から到着,又は韓国を経由して入国した者に対して,医療申告を強制的に実施する。誠実に申告しない場合は,ベトナムの法規に基づき厳格に処分される。韓国から入国した者は,14日間の経過観察を受けなければならない。

(2)韓国・大邱市及び慶尚北道から渡航した外国人に対して,ベトナムへの入国を一時的に中止する。ベトナム入国までの14日以内に,大邱市及び慶尚北道を通過した外国人も,一時的に入国が認められない。本措置は,2020年2月26日21時00分から適用される。

どこにも該当しない。この時点で、出国・入国できないことを、私は1ミリたりとも想像していなかった。