その本が出版されたのは1868年、なんと日本の明治元年のこと。
あるアメリカの作家が150年ほど前に書いた物語だ。いまだにアメリカではもちろんのこと、日本では訳本がいくつもあり、新訳も次々に出ているほど人気の作品で、これまでに何作もの有名な映画が制作されている。
作家志望の元気な若者が主人公。ゆるぎない家族の愛、ちょっとした日々の事件を描いたこの物語は、長い間、大勢の読者が夢中で読み、そのまた子どもや孫たちに薦めてきたものだ。
その物語の原題はLittle Womenという。日本で最初に訳されたときには、『小婦人』というそのままのタイトルで彩雲閣という出版社から出版された。1906年(明治39年)のことだ。
『小婦人』では、主人公である四少女はアメリカ人ではなく、日本人として登場している。長女メグ(マーガレット)は菊枝、次女ジョーは男の子っぽいから孝、三女ベスはのちに病気で亡くなるので露子、四女エイミーは恵美子。
この少女たちがめでたくアメリカ人に戻ったのは、1923年(大正12年)の『四少女』(春秋社)からだ。
16歳の長女メグは、大きな目と豊かな褐色の髪を持つ、きれいな少女。美しいもの、ぜいたくなものが好きなのだが、家が貧しくなったために手に入れられないことが目下の悩み。次女ジョーは背の高い敏捷な少女で、男だったらよかったのにと思っている、作家志望の15歳。
三女ベスは、音楽が好きで、心根の優しい「おだやかさん」。四女エイミーは、絵を描くのが得意で、一家の芸術家だと思われている。ちょっぴり自分勝手でおしゃまな、青い目に金髪の美少女だ。
欠点も長所もたくさんある、どこにでもいそうなこの少女たちの日常が、おもしろおかしく掬い上げられて描かれているこの物語は、そう、日本では『若草物語』として有名な、四姉妹の物語だ。