新型コロナウイルスの影響が拡大している。観光業や外食産業も大打撃。イベントの中止も相次いでいる。そんななかで全国の小中高校の突然の休校要請。試験どうなるの? 学年末の勉強終わるの? 卒業前のかけがえのない時間は? 仕事している親たちはいったいどうすれば――。もちろんなによりも感染拡大を防ぐことが大切で、それはわかっているのだけれど、初速で防げなかったのかな、親の仕事へのケアはなしで突然ってなんでだろう、とどうしても腑に落ちない思いもあるのではないだろうか。

そういう思いはさておき、目の前にあるのは、やることを奪われて時間を持て余す子どもたちの姿ではないだろうか。なにせ理由が感染拡大を防ぐため。休みだからといって、みんなで集まってディズニーやらカラオケに行くこともできない。友達たちと集まって鬼ごっこもできない。なら、普段は学校に加えて部活や習い事にとても忙しい子どもたちと親とが、一緒に向き合える時間ができると考えるのはいかがだろう。仕事もあってそんなわけにはいかない! という人も多く、その方面のケアももちろん早急に必要だけれど……。

吉村葉子さんはパリに20年以上住み、現在は日本に暮らしている。吉村さんのベストセラ―シリーズ『お金があっても不安な日本人、お金がなくても平気なフランス人』『激しく情熱的なフランス人、愛し足りな日本人』(ともに講談社文庫)より、エッセイをご紹介している本連載。今回は「貴方の一番大切なモノ」をテーマにお届けする。

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フランス人が大好きな質問

貴方の一番大切なモノはなんですか?

フランス人は、この手の質問が好きだ。気の置けない仲間が集まると、これで会話が数時間ももってしまう。大の大人がこんな話題で長時間喋っていること自体、考えられないという人もいるだろう。くだらないと、一笑に付す人もいると思う。だが、待てよ。自分にとって一番大切なモノって、いったいなんだろう

フランス人は政治のことも恋のことも真剣に議論する人が多い Photo by iStock

子供、夫、両親など、一番大切な人なら即座にこたえられるが、モノといわれると悩む。ところが日ごろから心に刷り込まれてでもいるようにフランス人の多くは、自分にとって世の中で一番大切なモノがなんなのかということを知っている。個人主義とかエゴイストだとかいわれる一般的なイメージとは裏腹に、彼らはとてもセンチメンタルな人たちでもある。家族がともに歩んだ記念碑を、彼らフランス人は、ほかのどんなモノより大切にする。

同じアパートに、マダム・ノウというおばあさんが住んでいた。サン・ミッシェル広場に面した建物の5階に終戦の年に住みはじめ、彼女の3人の子供たちはそれぞれ立派に成長している。子供といっても上の2人は、私より年上のムッシュたちだ。

昨年、パリを訪れたとき2年ぶりにマダムをお宅にお訪ねした。以前よりもいくぶん皺がふえた程度で、マダム・ノウは相変わらずのおしゃれおばあさんだった。そろそろマダムも80歳をこえるのではないだろうか。