「空気を読む」のがうまい人が、なぜか絶対にやらない「意外なこと」

日本人の空気を読む能力を徹底分析
中野 信子 プロフィール

ラグビーに熱狂した空気の正体

もうひとつ、日本人の代表的なステレオタイプ行動には「集団行動」というものがあります。

日本も個人主義が進んできたなどと言われていますが、私は最近あらためて「やはり日本人は集団でいることのほうが楽しいのだな」と感じさせられた出来事があります。

それは、ラグビーワールドカップです。日本チームは「ONE TEAM」をスローガンに快進撃を続け、大盛り上がりに。日本中ににわかラグビーファンが出現したほどですが、これも日本人が強く空気を読む性質を持っているからこそ起こった熱狂だと言えるでしょう。

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「アリー効果」という生物学の概念があります。これは、集団における個体密度が上がれば上がるほど、個体は適応力が高くなる、という現象のことです。

なぜ個体密度が上がると適応力が高まるかというと、繁殖がしやすくなるから。

若者の密度が低い限界集落のようなところでは配偶者も見つかりにくい。でも、都会だとあふれるほど未婚の異性がいますから配偶者も見つけやすい、ということを想像してもらえればわかりやすいかと思います。

適応というのは、次に生まれる世代の数が増えるということでもあるのです。

脳は個人より集団の意思を優先する

個体の数が増え集団のサイズが大きくなると、それだけ種は生き延びやすくなります。とくに人間の場合は身体的にも脆弱ですし、何より子ども時代が長いというウィークポイントがあります。子ども時代が長いということは、食べられやすい時間が長いということですから。

しかし、子どもを食べられてしまうと次世代が残らないので、私たちは子どもたちを何としてでも守らなければなりません。となるとお母さんひとりで守るより、大人数で守ったほうが圧倒的に生き延びる確率が高くなります。

また今のように食べられる心配はなくとも、集団が小さいといざというときに子育てを肩代わりできる人がいません。でも大家族で育てていると、両親に何かあっても祖父母が代わって面倒を見てくれるなど、やはり生き延びる確率が上がります。

 

このように集団のサイズが大きい、または密度が高いほうが生物は生き残りやすい、というのが「アリー効果」です。

それゆえ私たちの周りには常に、「集団を大きくしておこう」という圧力、つまり空気が渦巻いています。結果、個人の意思よりも集団の意思を優先しましょう、という仕組みが脳にもできている。だから私たちは、チームのために戦うという集団スポーツにあれほど惹かれるのでしょう。