AIはどこまで人間に近づくのか――人工知能が「創造性」を持つまで

【特別対談】栗原聡×河合莞爾
現代ビジネス編集部 プロフィール

人間は「孤独」なのか

河合:AIはこれからどう進化するのか気になるところですが、AIの進化の方向性には、二つの考え方があるそうですね。一つは、人間の役に立つ技術として高能率化するという考え方。もう一つは「知能」そのものが主役であり、知能の限界に達した人間を見捨てて(笑)、さらに高度なレベルの人工知能へと進化したがっているという考え方。

栗原:それぞれ「地球派」「宇宙派」と呼ばれている考え方ですね。

河合:でも私にはもう一つ、AIの進化には「限りなく人間に近づいていく」という方向があるように思えるんです。今回の「TEZUKA2020」もそうですし、美空ひばりさんのAIに新曲を歌わせたり、出川哲朗さんの亡くなったお母様を復活させたりというのも、みんなその表れのような気がして。

栗原:マツコ・デラックスさんそっくりの「マツコロイド」も造られましたよね。フロリダの「サルバドール・ダリ※6美術館」では、AIで復活したAIダリが来館者を出迎える催しが行われました。

AI化したダリ(フロリダ州セント・ピーターズバーグ「ザ・ダリ・ミュージアム」)photo by Fresh Gadgets

河合:文系の人間だからでしょうか、私は「なぜ人間は、人間に限りなく近いAIを作ろうとするのか」という、人間側の問題のほうに惹かれるんですよ。栗原先生ご自身、「人間を造りたい」という願望がAI研究の出発点だとおっしゃいましたよね?

栗原:では、それはどういう理由からだとお考えですか?

河合:人間が「孤独だから」じゃないかと思うんです。現生人類は他の人類を絶滅させてしまって、地球上に生き残った唯一の知的生命になってしまいました。だから話し相手がいなくて寂しいんじゃないかと思うんです。

栗原:「人間は孤独だから、人間に似たAIを作る」ですか。それは考えたことがありませんでした。

河合:人間は大昔から「人間のようなもの」を造ろうとしてきましたよね? タロースやゴーレム、エンキドゥ、ロボット、そしてAI。宇宙人だって、人間の孤独感が生み出した存在かもしれない(笑)。

栗原:言われてみれば思い当たることがあります。AIは人間が、楽をしたい、便利に暮らしたいと思って作った道具です。でも、さらに「いちいち指示するのは面倒になり、少しは自分で考えて動いてくれないか?」とか「俺が何をしてほしいか、もっと忖度して(笑)動いてくれないか?」と考えるようになると思うのです。

河合:AIに、人間と同じようなことを求めるようになるんですね。

栗原:人間同士では逆にわかり会えないことも多いですからね。「誰かに自分を理解してほしい」「もっとわかり合える存在がほしい」というのが、人間の本当の気持ちかもしれません。

河合:人間は社会性のために意識を得た生き物だとおっしゃいましたが、もう社会に疲れちゃっているのかもしれませんね(笑)。

栗原:人間が安定的な社会関係を維持できる人数※7は150人、多くて300人程度だと言いますしね。

河合:それじゃあ、疲れる訳です(笑)。

 

栗原:社会が大きくなりすぎているのかもしれません。交通機関の発達やインターネットの出現で世界は拡大していますが、人間の脳は何万年も変わっていませんから、オーバーフローしそうになっていてもおかしくありません。人間は完璧なシステムではありませんし、我々がよかれと思って発明したはずのテクノロジーに逆に支配されるようになりつつあるような気がします。

※6 サルバドール・ダリ(Salvador Dali、1904~1989):スペイン・フィゲーラス出身の画家。奇行で知られるシュールレアリズムの天才。代表作に『燃えるキリン』(1937年制作、スイスのバーゼル市立美術館所蔵)など
※7 イギリスの人類学者ロビン・イアン・マクドナルド・ダンバー(Robin Ian MacDonald Dunbar 1947~)が提唱した「ダンバー数」。人数については、他の研究者によって諸説が生まれている