AIはどこまで人間に近づくのか――人工知能が「創造性」を持つまで

【特別対談】栗原聡×河合莞爾
現代ビジネス編集部

いずれAIも意識を持つ

河合:では、自律的な知能とは、どういう仕組みなんでしょう?

栗原:自律的に行動する人工知能に対しては,恐らく我々は「意識」を持っていると感じると思います.一方,人の意識には「潜在意識」と「顕在意識」という2種類があります。そして顕在意識のほうを、一般には意識と呼んでいます。

河合:私も聞いたことがあります。神経科学者のリベット※3やダマシオ※4によると、人間は顕在意識で考える前に、潜在意識で無意識に行動しているそうですね。古くは哲学者のスピノザ※5も言っていたそうですが。その結果、意思や感情などが後付で脳内に生じて、それが顕在意識、即ち意識なんだと。

栗原:そうですね。人間の潜在意識は、大規模で複雑ではありますが、割り切った見方をすれば単なるシステムです。しかし、人間は進化の過程で潜在意識に加えて顕在意識も獲得したのです。

河合:でも、どうやったらAIに顕在意識が生じるんですか?

栗原:人間の場合を考えてみましょう。人間は社会生活をする生き物です。よって人間に意識が生まれたのは、人間が社会性を維持するために有効だったからと考えられます。意識を持つことが大勢の中で生き残るために有利だった訳ですね。大勢の他者との関係の中で、意思や感情を相手に伝えられれば生存に有利だから、そのために言葉や表情を手に入れて、操ってきたんです。

河合:じゃあ、AIを積んだロボットが社会生活を始めれば、意識が生まれる……?

栗原:そういう仮説も成り立つかもしれません。AIロボットが人間と生活を持ち始めた時、意識を持っている「フリ」をしたほうが、人間とのコミュニケーションをする上で便利だと考えるかもしれない。そうしたらAIロボットは、意識的に笑ってみせたり泣いてみせたりするかもしれない。勿論これは感情の発露ではなくて演技ですが、人間だって意識や感情は後付なんですから、乱暴な言い方をすれば同じだとも言えます。

河合:そのうちAIロボットは、相手が喜ぶことを推測してお世辞を言ったりするようになるかもしれませんね。はあ……、もう呆然とするばかりです。それにしても、AI研究はプログラミングだけじゃなく、人間に関するあらゆる分野の知識が必要なんですね。

 

栗原:そうですね。AI即ち人工知能を研究するには、まずは人間の知能を知らなければなりません。知能を研究しようと思うと、研究対象は思考や記憶のほか認知、倫理などのあらゆる事象に及ぶことになり、脳科学や心理学、生理学、人間工学、哲学にも広がっていきます。つまり、AIを知るということは「人を知る」ということなんです。

※3 ベンジャミン・リベット(Benjamin Libet,1916~2007):アメリカの神経生理学者。著書に『マインド・タイム 脳と意識の時間』(下條信輔訳・岩波書店)など
※4 アントニオ・ダマシオ(Antonio Damasio,1944~):ポルトガル系アメリカ人の神経科学者。著書に『進化の意外な順序‐感情、意識、創造性と文化の起源』(高橋洋訳・白揚社)など
※5 バールーフ・デ・スピノザ(Baruch De Spinoza,1632~1677):オランダの哲学者。著書に『エチカ』(河井徳治訳・晃洋書房、ほか各社)など

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