自分のおっぱいを
まじまじと見つめることなんてなかった

母親になったのに、赤ちゃんにおっぱいを吸ってもらえない。日本の成人女性の10人に1人がその壁に直面する※1ことを、どのくらいの人がご存知だろうか。

筆者も、知らずに出産してショックを受けたうちの一人だった。今まで、まじまじと自分のおっぱいを見つめることなどなかったのだから。私のおっぱいは、先天性の、陥没乳頭なのである。

陥没乳頭とは、通常なら飛び出している乳首の先が、内側へとへこんでいる乳頭のこと。見た目だけの問題かと思いきや、赤ちゃんによっては、お乳をくわえることすらままならない。産後、母乳で育てるかミルクにするか混合か……という選択をする以前の問題なのだ。

この乳首、妊娠前になんらかの対処ができなかったのか――。出産を終えた今では遅いのだが、そんな思いが頭をよぎり、東京都世田谷区にある「Be born助産院・産後養生院」のたつのゆりこ先生を訪ねた。

たつの・ゆりこ/鹿児島県生まれ。大学病院から助産院、自宅出産と幅広く勤務経験を持つ。鍼灸師としてアロマテラピーと鍼灸を統合した治療室を開設。女性と子供のための治療室「Be born治療室」を開設。全国的にベビーマッサージの普及活動を行い母子支援に従事する。世田谷に「Be born助産院・産後養生院」を開設、院長就任。更年期女性の健康相談室を開設し、現在に至る

「陥没乳頭についてハッキリした問題意識を持って相談を受けることは、あまりありません。けれども、いざ、おっぱいを見せてもらうと、陥没乳頭って実際にはけっこう多いんです。10人に1人というデータもその通りかもしれません。

この助産院に来る方でも妊娠後に自覚するケースが少なくないんです。けれどもそれは手遅れではありません。乳頭を出す方法としてはマッサージが挙げられますが、いざ妊娠してから乳頭部位だけを出そうとマッサージしても、子宮が収縮しやすかったりしますので、もっと体全体の問題としてみていく必要があります」

※1 発生頻度は1.8~3.3%程度であるが、妊婦を対象とした調査では10%程度にまで上昇。参考:『形成外科ADVANCEシリーズ II-5 乳房・乳頭の再建と整容 最近の進歩 第2版』(波利井清紀監修)