「産後ドゥーラ」という仕事とは

今、水戸川さんはたくさんの顔をもって活躍しているが、そのひとつが、親を非医療者の立場から支援する「ドゥーラ」という仕事だ。「ドゥーラ」とは「仲間」「友人」の立場から、他の女性やその家族の妊娠・出産・子育てを助ける人という意味のギリシャ語で、このような存在に守られながら、コミュニティーの中で助け合いながら子育てをするのが私たち「ひと」本来の姿である。

文化人類学者のダナ・ラファエロが、伝統的な社会では、集団の中にいる女性が母親になるときはそれを助ける女性が必ずいることを指摘し、その存在を「ドゥーラ」と呼んだのがこの言葉が知られるようになった最初である。欧米ではカウンター・カルチャーの時代に出産環境の行き過ぎた効率化が問題となり、女性の文化人類学者たちが異文化の出産や育児に西欧社会が置き忘れた宝物を見出し著作を発表していくのだが、ラファエロもそのひとりだった。

1990年代には、米国で、小児科医や出産準備教育の専門家が立ち上げた組織が、非医療の立場から妊産婦、産後の母親に付き添い、寄り添う女性の養成と認定を行う組織を作り、その役割をドゥーラと称した。今は日本にもこの考え方を取り入れたドゥーラの団体があり、水戸川さんはそのひとつである一般社団法人ドゥーラ協会で学び、認定を受けた。依頼があった母親の家庭を訪ね、育児や、クッキングなどの家事を提供して暮らしと心を支える。

依頼者の家庭に入り産後ドゥーラして活動中の水戸川さん 撮影/河合蘭
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水戸川さんの依頼者は、さまざまだ。子どもに障害があってもなくても、どちらの子の育児も経験済みの水戸川さんはボーダーレスにドゥーラを引き受ける。また妊娠中の人もいる。中でも、出生前診断で胎児の病気がわかってつらい状況にある妊婦から絶えず依頼を受けているのは、ドゥーラ協会の認定産後ドゥーラが現在500名を数える中で、水戸川さんの大きな特徴になっている。