ベビーカーで散歩させたい…最愛の子を喪った母親の願いが叶うまで

死を見つめる仕事「エンバーミング」
小泉 カツミ プロフィール

髭を剃り、整髪をして…

では、エンバーミングは具体的にどのように行われるのだろうか。

「依頼の多くは葬儀社からですが、ご遺族から直接いただくこともあります。依頼がありましたら、できる限りご自宅に伺うようにします(病院の場合も)。そこでエバーミングの処置内容や工程、その他必要事項を説明して、ご遺体のお体の状態をチェックさせていただきます。

そして、その上で依頼書に署名捺印をしていただき、細かい依頼内容を詰めていきます。例えば、お顔をふくよかにするとか、傷跡を隠すとか、あるいは髭を剃るのかどうか、義歯があったらお入れするのかどうか、など一つ一つ丁寧に確認していきます。こうしたプロセスを経て、ご遺体を搬入することになります」(真保さん)

エンバーミングは、専用の施設で行うことが決められているため、搬入する必要があるのだ。

「処置は、葬祭場の専用の施設を借りて行う場合もありますが、弊社は処置室の設備がある移動車両を持っていますので、その中で行うことも多いですね」

ディーサポートにおけるエンバーミングの処置の流れはこうだ。
(1)脱衣を行いながら、もう一度体の状態を確認する。
(2)体の洗浄、消毒を行う。
(3)顔の表情を整え、洗顔(髭を剃る場合はこの段階で剃る)、保湿剤を塗布する。
(4)小切開を行い、薬剤(エンバーミング保全液)を注入する。
(5)エンバーミング保全液を体内循環させ、血液を排出させる。
(6)小切開を行い、胸水・腹水の吸引と各臓器への薬剤補填を行う。
(7)切開部を縫合する。
(8)全身を洗浄する。
(9)着付け、整髪、化粧を施す。

 

顔色が明るくなり、表情がよくなる理由

「ポイントとなるのは、工程4・5・6なんです」と真保さん。

「鎖骨のちょっと上あたりを2cm弱くらい切開して、頸動脈(けいどうみゃく)を確保してそこからエンバーミング保全液を注入します。イメージ的には血液透析のような感じですね。血管内に薬を循環させて、体内にある血液を頸静脈から排出させていきます」

エンバーミングをすると、顔色が明るくなり、表情がよくなるのは、このエンバーミング保全液が血液と同じ色合いをしているからだ。

また、胸水や腹水があると、後々遺体が悪化するので、お腹をやはり2mm弱切開して、腹膜、胸膜、肺に専用の器具を当てて吸引する。その後、別の器具を使って、各臓器に防腐のための薬剤を補填する。

切開部縫合までの処置の時間は、平均3時間。ただ実際にエンバーミング保全液が、しっかり細かいところまで入っているかということは、この時点ではわからない。だから、ディーサポートでは念のため、プラス2時間〜3時間待って、細かいところをチェックし、追加注入しているという。