ベビーカーで散歩させたい…最愛の子を喪った母親の願いが叶うまで

死を見つめる仕事「エンバーミング」
小泉 カツミ プロフィール

兵士の遺体を祖国に帰すために

エンバーミングの始まりは古代におけるミイラにまで遡ることができる。

近代においてエンバーミングが急速に発展する契機となったのは、1860年代の南北戦争であると言われている。当時の交通手段では、兵士の遺体を故郷に帰すのに長期間を要し、遺体保全の技術が必要とされたのだ。

さらに、1970年台のベトナム戦争により、母国へ送る兵士の遺体のためにより一層の技術発展をみたと言われている。真保さんが説明してくれた。

「土葬が主流ということもあって、アメリカやカナダではエンバーミングが一般的です。一方、火葬が主流の日本ではその普及率は約1.7%、主要都市での普及率は5〜6%と考えられています。ただ、最近は十分な保全期間を活用して、ゆっくりお別れをしたいというご遺族が少しずつ増えてきたように思います。故人様を囲むように行うビューイング葬※1も注目されてきていて、以前よりは認知されるようになりました」

※1 ビューイング葬とは、故人の遺体を中心に据えたお葬式のこと。アメリカなどでは一般的なメモリアルサービスで、近年日本でも取り入れる葬儀社が出てきている。故人を安置した棺を中央に配置しその周りは花で飾られ、家族や会葬者の人たちは故人を取り囲むようにして葬儀を行う
ビューイング葬のイメージ 写真提供/株式会社弘善社
 

真保さんは、エンバーミングのメリットとして次のようなことを挙げてくれた。
・衛生面の良化
・遺体の状態の維持
・消臭効果
・顔色がよくなる
・防腐処置や殺菌消毒を行うため、ドライアイスが不要(補充についての心配がなくなる)